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2015 年度 実施状況報告書

超小型X線管用電子源に関する基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 26670302
研究機関京都医療科学大学

研究代表者

林 茂樹  京都医療科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90395228)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード電界放射 / 電界計算シミュレーション / 窒化ホウ素 / 窒化アルミニウム / タングステン / 電界放射顕微鏡 / 透過型電子顕微鏡 / 電子線回折
研究実績の概要

医療分野では100年来フィラメントを高温加熱した熱電子によるX線管を使用している為、X線管の小型化は困難である。室温において電界放射電子を用いればX線管の小型化が可能となる。本研究では電界放射を用い体内にも挿入できるような超小型医療用X線管実用化のための基礎研究を実施する。本年度は、窒化物製膜したタングステン針の尖鋭化に関する実験を行った。電界放射特性の向上を目指して、窒化物(窒化アルミニウム;AlN、窒化ホウ素;BN)の薄膜をタングステン針の先端に成膜した試料を用いて超高真空下で窒化物成膜タングステン針に高電圧をかけると、窒化物の薄膜をタングステン針が貫通して電界放射が起こることを発見した。また、これにより電界放射特性の向上を確認することができた。AlN製膜したタングステンからは得られなかったが、BNを700nm製膜したタングステンは先端が先鋭化し、かつ単結晶化していることを確認した。以下、この1年間で得られた研究実績の概要を示す。
(1)窒化物(AlN, BN)を成膜したタングステン針を超高真空下で電圧印加させると窒化物薄膜をタングステン針が貫通し、針の先端から電子が放出され電界放射が引き起こされることを発見した。
(2)膜厚700nmのBN成膜タングステン針から先鋭化したFEM像が得られた。他の膜厚のBN成膜、AlN成膜タングステン針では先鋭化が確認できなかった。
(3)膜厚700nmのBN成膜タングステン針の先端をTEM観察すると六回対称のタングステンの原子像が観察でき、さらに電子線回折像からタングステン針先端の単結晶化および、その方位が体心立方晶系<110>面であることが分かった。
(4)電界計算との比較により、電界放射実験から得られた電界増強因子βと 先端電界Fの値が共に小さいときのみBN成膜タングステン針が単結晶化されていることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

電磁界解析ソフトウェアELFIN((株)エルフ社製)を使って窒化物(窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN))成膜したタングステン針先端の電界計算シミュレーションを行った。タングステン針を平面陽極に垂直に配置し、陰極を接地して陽極に高電圧を印加したとき、針先端に電界が集中しており、AlN, BN共に薄膜が厚くなるにつれて先端電界Fが低くなっていることが確認できた。
超高真空下で窒化物成膜タングステン針に高電圧をかけると、窒化物の薄膜をタングステン針が貫通して電界放射が起こることを見出した。また、これにより電界放射特性の向上を確認することができた。BNを700nm製膜したタングステンから先鋭化したと思われる電界放射顕微鏡(FEM)像が得られた。AlN の結晶構造が立方晶系であるのに対して、BNは黒鉛のような六方晶系の積層構造で各層が弱いファンデルワールス力で結合されていることによる違いから生じていると思われる。この尖鋭化された試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。その結果、タングステンとBN薄膜が明瞭に分離して観察され、BN薄膜を貫通し先鋭化したタングステン針が生成され先鋭化部分のBN薄膜はさらに薄くなっていることが分かった。その先端部を60万倍に拡大したTEM像ではタングステン原子が明瞭に観察され、六回対称のタングステン原子の構造を確認することができた。更に、電子線回折(EBD)パターンを観察することが出来た。それを解析した結果、タングステンの原子構造図 (体心立方晶系、格子定数:3.16Å)の<110>面であることが分かった。
電界計算との比較により、電界放射実験から得られた電界増強因子βと 先端電界Fの値が共に小さいときのみBN成膜タングステン針が単結晶化されていることが分かった。

今後の研究の推進方策

今後は、窒化アルミニウムホウ素(AlBN)、窒化シリコン(Si3N4)等の窒化物を製膜して、同様の実験を行いタングステンの単結晶化が得られるかを調べる。この為には、引き続き透過型電子顕微鏡(TEM)および電子線回折(EBD)を用いてタングステン針の先端形状の詳細観察を行う。
タングステン単結晶化の形成機構に付いて理論的な考察を行い作成手法の確立を目指す。また、今後も国際学会での発表や論文投稿を行い、本単結晶化の物理的意味付けや実用化される為の技術的な最終的な課題解決を模索する為に、本手法の有効性をアピールすると共に広範な技術の拡散を目指し、本テーマの今後への発展を目指したい。
なお、本研究の一部は文部科学省委託事業ナノテクノロジープラットフォーム課題として物質・材料研究機構微細構造解析プラットフォーム(京都大学・化学研究所のTEM)の支援を受けて実施されました。今後も文部科学省委託事業ナノテクノロジープラットフォームを利用させていただく予定である。

次年度使用額が生じた理由

外部委託している窒化物製膜の予定が来年度にずれ込んだため。

次年度使用額の使用計画

昨年度使用できなかった窒化物製膜の費用は来年度に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] A novel method for formation of single crystalline tungsten nanotip2016

    • 著者名/発表者名
      S. Hayashi, M. Ono, S. Tomonaga, and H. Nakanishi
    • 雑誌名

      Micro and Nano Systems Letters

      巻: 4(1) ページ: 1-6

    • DOI

      10.1186/s40486-016-0029-3

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] A novel method on single crystallization of h-BN coated tungsten tip using to a point electron source2016

    • 著者名/発表者名
      S. Hayashi, I. Kobayashi, R. Onoyama, Y. Kano, and Y. Yoshida
    • 学会等名
      13th International Conference on Nanosciences & Nanotechnologies (NN16)
    • 発表場所
      Thessaloniki, Greece
    • 年月日
      2016-07-05 – 2016-07-08
    • 国際学会
  • [学会発表] A novel method for formation of single crystalline tungsten nanotip and its application to high brightness electron source2015

    • 著者名/発表者名
      S. Hayashi, M. Ono, S. Tomonaga, and H. Nakanishi
    • 学会等名
      1st International Conference on Applied Surface Science (ICASS)
    • 発表場所
      Shanghai, China
    • 年月日
      2015-07-27 – 2015-07-30
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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