研究課題/領域番号 |
26670307
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村木 重之 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40401070)
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研究分担者 |
吉村 典子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60240355)
阿久根 徹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), その他部局等, その他 (60282662)
岡 敬之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60401064)
庄島 正明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80376425)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 老化 / MRI / 疫学 / 認知症 |
研究実績の概要 |
本研究の対象者は、平成25年度に立ち上げた住民コホートの対象者、1,690名である。本コホートは、住民票よりランダムに抽出した40歳以上の高齢男女を対象に行われていた住民検診の対象者に同意を得て、認知症疫学調査へと拡大させたものであり、地域代表性は確立されている。ベースライン調査項目は、全例に対して脳MRIを撮像するとともに、Mini Mental State examination (MMSe)、長谷川式簡易知能評価スケールを含む認知機能、老年期うつ病評価尺度(GDS)を含むうつ状態のほか、生活歴・ADL・QOL(SF-8, EQ-5D, WOMACなど)・既往歴・職業歴などを含めた200項目以上にわたる問診調査、歩行速度、片足立ち時間、椅子立ち上がり時間を含む運動機能調査、血液検査(血算、腎機能、肝機能、糖・脂質・尿酸代謝、炎症マーカー等)、尿検査(潜血、糖、蛋白検査等)である。その結果、MMSeが24点未満を軽度認知症(Mild cognitive impairment: MCI)と定義した場合の有病率は、全体で4.5%(男性 5.1%、女性 4.2%)であった。MCIの有病率は、年齢と有意な相関を示しており、80歳代では全体で17.1%(男性 16.7%、女性 17.3%)と高い有病率を示していた。次に、重大な運動器疾患の一つである変形性膝関節症(膝OA)との関連を検討したところ、追跡調査時に膝OAが発生した対象者は、発生しなかった対象より、ベースライン調査におけるMCIの有病率が有意に高く、年齢、性別、BMI、地域にて補正した多重ロジスティック回帰分析を用いたところ、MCIは膝OAの有意なリスクファクターであった(オッズ比 4.59、95%信頼区間 1.18-17.7)。さらに、本年度は、脳MRIの読影およびVSRADを用いた海馬傍回の体積の萎縮度に関する測定を行い、既に全例完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に、認知症の有病率や運動器疾患との関連は明らかになったうえ、脳MRIの読影およびVSRAD測定は済んでおり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではすでに横断研究にてMCIの有病率や関連因子を明らかにする事は出来ているが、横断研究では、関連性は明らかにできても、因果関係を持って危険因子や防御因子を明らかにすることはできない。そこで、平成27年度は上記コホートの追跡調査を行うが、研究者は対象者と極めて良好な関係を築いているうえ、すでに参加者の同意は得ており、高い追跡率が期待できる。調査項目は、Mini Mental State examination (MMSe)、長谷川式簡易知能評価スケールを含む認知機能、老年期うつ病評価尺度(GDS)やWHO-5を含むうつ状態のほか、基本チェックリスト、生活歴・ADL・QOL(SF-8, EQ-5D, WOMACなど)・既往歴・職業歴などを含めた400項目以上にわたる問診調査、歩行速度、片足立ち時間、椅子立ち上がり時間を含む運動機能調査、血液検査(血算、腎機能、肝機能、糖・脂質・尿酸代謝、炎症マーカー等)、尿検査(潜血、糖、蛋白検査等)である。追跡調査のデータをベースラインデータと統合することにより、認知症の発生率、増悪率の解明できるとともに、その疾病自然史、ADL、QOL、要介護度への影響、さらにはMCIの危険因子、防御宇因子を解明する。これらのデータを基に、高いエビデンスレベルにおける早期予測判定指標の確立および効果的な予防法を提言する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、これまでに蓄積したデータの解析を行ったため、想定より支出が少なく済み、結果、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はコホート追跡調査を行うため、同調査に対する物品費、旅費、人件費に 充てる予定である。
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