これまでの日本における予防接種制度は、必ずしも客観的かつ科学的な根拠に基づいて策定されたものでなかった。本研究は予防接種の政策判断において最適な選択肢を科学的に同定する数理モデリングプロジェクトとして計画・実施した。具体的には、①定期予防接種の対象疾患の選択・除外方法、②風しん流行途中の緊急接種における必要接種数と対象者、③副反応が報告されたワクチンの定期接種の継続・中止の判断、の3点に課題を絞って基礎的な解析手法を確立すべく研究に取り組んだ。風しんや子宮頸がんワクチンなど社会的関心の高い課題を対象に、オペレーショナルなモデル構築を通じて、現実の接種戦略で最も妥当な政策対応が何なのかを明らかにすることを目的とした. 最終年度は、①定期接種の費用対効果分析、②風疹ワクチンの緊急接種モデリング、③副反応による定期接種の中止判断基準の考案、について取り組んだ.3番目は時間が足りなかったが,1・2番目は投稿できる結果まで至った.特に,2では風疹ワクチン接種が2013年の任意の時刻に接種可能としたときに、(i)年齢別・性別の優先的接種対象(小児か成人かいずれを優先するか)、(ii)妊娠可能年齢の女性の接種を継続するか、そして(iii)接種前に対象者の免疫状態を確認する血清検査を実施するか、について検討し、それぞれ考え得る政策オプションに関して費用対効果を検討し、最適な接種戦略の同定を行なった.
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