研究課題/領域番号 |
26670310
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松郷 誠一 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (30148126)
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研究分担者 |
水上 知行 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (80396811)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生体材料 / ラマンスペクトル / リポ酸 / 特異性 |
研究実績の概要 |
共同研究者の水上助教とともに、まずラマンスペクトル測定条件を詳細に検討することを目的として生体に存在するラマンスペクトル測定の強みを発揮出来るC-S, S-S結合をもつリポ酸を用いてラマンスペクトル条件を検討した。ラマンスペクトルは鮮明に観測出来たので、これを生体系に近い複合系という視点からシクロデキストリンに包接させた状態での解析を行なったところ、シグナル強度の減衰が認められた。このような挙動の一般性を探る目的でシクロデキストリンの種類を変えて挙動を調べるとともに、相互作用が強く存在する状態とそうでない状態におけるスペクトルの違いについて検討を行った処、相互作用が強くない状態では本来のスペクトルが観測出来るのに対して、相互作用の強い状態ではスペクトル強度が著しく減弱する事が観測出来た。相互作用をとっている状態における物質の特異的な位置把握を行なう目的でラマンマッピングを行なった処、リポ酸のC-S, S-Sの特徴的なシグナルは相互作用の強い状態ではほとんど観測されなかったが、相互作用の弱い状態では明確なシグナルとして認められた。生体の相互作用を調べる上で有用な情報と考えられる。ラマンスペクトルと同時に赤外スペクトルを用い、赤外スペクトルで強い振動波長を持つリポ酸由来のカルボニル化合物について測定を行なった所、これもシクロデキストリンの種類により差を示すことが明らかになり、相互作用のあり方を知る上でのよい基礎実験結果として利用出来るものと考えている。これらの実験結果は昨年、国際学術雑誌に投稿し掲載されている。 生体材料を用いた実験にも着手を開始するための準備ならびに予備実験を実施している。生体材料をラマンスペクトル測定しても鮮明な画像は得られないことがわかったので、現在生体材料を金簿膜などで修飾した後に表面励起してスペクトル測定可能な強度に高めるための実験を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラマンスペクトル装置を購入し、その立ち上げを行ないラマンスペクトル測定をいつでも行なえる状態に整えた。共同研究者との連携を行なうことにより、現在迄にラマンスペクトルを中心とした各種スペクトル測定を駆使したリポ酸の糖分子(シクロデキストリン)との相互作用(生体モデル)をまとめた結果が国際学術雑誌に投稿誌掲載されている。この過程で得られた一連の情報ならびに実験データ、技術は2年目の研究を進展させる上でも重要なものと考えられる。また、スペクトル測定における問題点や改良を必要とする点等が明らかになったことより研究を進展させる上での技術開発や工夫を今後行なう必要があることがあきらかになった。 共同研究者との連携は論文に共著者として加わっていることからわかるように極めて良好であり、ラマンスペクトルの詳細な検討を行なうためにも重要な役割を担ってくれている。また、ラマンスペクトルに限らず各種スペクトル測定に長けた他の研究者との連携も行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を通して、生体材料系への応用を行なう上での基礎的なスキルはそろったといえる。今後、この研究を生体計測として捉えて4年生、ならび大学院生などを加えて研究を推進していくつもりである。予備実験より顕微ラマンスペクトルを用いて生体材料のスペクトル測定を行なった結果、条件を整備しないと直接ラマンスペクトル(散乱)を観測することは難しいことが明らかになった。これらの結果はラマンスペクトル測定を用いた診断結果とはよい一致を示さないものであるが、こうしたことの原因についても独自の視点から探っていきたい。非侵襲的な方法の有用性が叫ばれているが、特異的なラマンセンシングはこの一助になるので、測定条件の整備、特異的な検出方法の確立について研究を進めていく。
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