研究実績の概要 |
【背景】HSA(human serum albumin)はN末端から34番目のシステイン残基の構造によって、酸化型アルブミン(HNA)と還元型アルブミン(HMA)に大別することができる。近年、抗酸化物質として注目されており、生体内のredox状態を評価するための有用なマーカーであることが示唆されている。しかしながら、これまでの研究対象者はCKD患者や透析患者に限定されており、一般成人集団を対象とした疫学研究はない。 【目的】一般成人集団においてHSAのredox状態と動脈硬化指標とされる頸動脈でのIMT(Intima Media Thickness)やプラークの形成との関連を明らかにすることを目的とした。 【方法】北海道二海郡八雲町で実施された住民ドック受診者のうち研究同意者521名から286名(男性125名、女性161名)抽出し、解析対象とした。喫煙や飲酒、運動習慣に関するデータは、自記式質問表から得た。血圧、IMT、プラークの有無は健診結果を利用した。HSAをHNAとHMAに分離定量する測定法は、HPLC-post column BCG法を用いた。統計解析では従属変数にIMTとプラークの有無を、独立変数にはHMAの割合(%)、多変量調整による重回帰ロジスティック回帰モデルにあてはめた。 【結果】対象者の平均年齢は、65.2±9.2歳であった。HNAとHMAの割合はそれぞれ64.0±6.7%、36.0±6.7%であった。HMA(%)とIMTの間には有意ではないが負の関連を認め(β=-0.01, p=0.09)、プラークの有無に対するHMA(%)のレンジあたりのオッズ比(95%信頼区間)は0.10(0.01-0.66)(p=0.02)であった。 【考察・結論】一般成人集団を対象としてHSAのredox状態と生体の動脈硬化指標との関連を調査した結果、HMAはIMTとの間に負の弱い関連を示した。また、HMAの上昇とプラーク形成のリスク低下との関連が示唆された。
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