研究実績の概要 |
ながはま0次コホートの第2期調査(平成24~28年度)において、27年度までに約8,500人を対象にデータ収集(0次健診)を終えた。今年度は追跡期間中の脱落相当例(約1,500人)を追加で募集して同様の健診を行い、1万人分のデータセットを構築した。このうち家庭血圧測定を希望した約9割の対象者に血圧計を貸与し、うち適切に測定できた値のみを解析に用いた。28年度に収集したデータはクリーニング中であるため、27年度までのデータを用いて検討を進めた。 家庭血圧は、日本高血圧学会ガイドラインに則った方法で就寝前、起床時の値を1週間測定するように依頼した。加えて、カフを上腕に巻いた状態で就寝するように依頼し、睡眠中の血圧(0、2、4時に自動測定)も測定した。対象者にはアクチウォッチも貸与しており、その情報から睡眠時間を客観的に割り出すことで、正確に睡眠血圧を抽出した。 一晩の就寝前、睡眠中、起床時測定が全て揃っていた4,792例を対象とした検討では、有意に低い睡眠血圧を観察した(就寝前収縮期血圧 122±16、睡眠中 113±15、起床時 127±18 mmHg)。一般的に睡眠中には血圧が低下するため、睡眠時の降圧の消失または上昇は臓器障害のリスク因子となることが知られている。本研究では、睡眠時の降圧度に季節差があることが明らかとなり(夏 -5.8%、春・秋 -8.2%、冬 -11.1%)、血圧日内変動とアウトカムとの関連を検討するためには、季節差を十分に考慮する必要性が明示された。加えてえ、血圧日内変動の再現性はあまり高くなく(測定初日を基準とした場合の一致度(κ係数)は、2日目 0.176、3日目 0.188、4日目 0.141、5日目 0.151)、日内変動とアウトカムとの関連を検討する上では、複数日の測定を行うなどして精度を高めることが必要といえた。
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