研究課題/領域番号 |
26670314
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 壽亮 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90275123)
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研究分担者 |
田中 司朗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60522406)
野間 久史 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (70633486)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メタアナリシス / 比較効果研究 |
研究実績の概要 |
私たちは、近年非常に大きな注目を集めている、複数の治療選択肢に関するエビデンスを集積し、統合し、相対的な評価を下すネットワークメタアナリシス(network meta-analysis: NMA)を、臨床疫学者と医療統計学者の緊密な協働の元に、複数実施し、かつその理論的検討を行うことを研究課題としている。この研究目的に従い、本年度は、以下の研究実績を上げた。 (1)ネットワークメタアナリシスの実施・発表:うつ病の精神療法のNMAとしてCognitive Therapy and Research誌に認知行動療法の特異的成分を抽出する研究の結果を、Acta Psychiatrica Scandinavica誌に認知行動療法の臨床試験の対照群として用いられる種々の方法のうち待機群が治療効果の過大推定に結びついていることを発表した。 双極性障害の維持治療について、Lancet Psychiatry誌に、lithiumが躁病相にもうつ病相にも有効で第一選択肢となることを示すNMAを発表した。 一方、うつ病の薬物療法のNMAは、非常に大規模なものになっており、未出版データの取得も含めて国際共同研究を進めている。現在400本以上の論文からのデータ抽出を終え、2015年度内の完成を目指しデータクリーニングを進めている。パニック障害の精神療法のNMAは第一原稿を完成し、コクラン共同計画に投稿して査読を待っている。 (2)ネットワークメタアナリシスの理論的研究:NMAにおけるランダム効果モデルについて、研究論文の第一原稿を完成し、Biometrics誌に投稿して査読を待っている。NMAのエビデンスの質を吟味するガイドラインをClinical Orthopaedics and Related Research誌に投稿し出版予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2014年度内に終了する予定であったうつ病の薬物療法のNMAが巨大なNMAとなりつつあるため、2015年度までかかることとなった。一方、うつ病の精神療法のNMAを2本、双極性障害の維持治療のNMAを1本、すでに年度内に出版し、さらにパニック障害の精神療法、また理論的研究についても複数の論文をすでに原稿を完成し投稿する段階まで進めたことは当初予定以上の進展であり、よって、総じて本研究は当初計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、うつ病の薬物療法のNMAを鋭意進める。パニック障害の薬物療法のNMAも国際共同研究で進展しつつある。また、パニック障害の精神療法について component NMAを開始した。component NMA (NMAに含まれた個々の治療選択肢だけではなく、その要素ごとの効果を推測する)はまったく新しい手法であるので、理論的な考察も平行して進めたい。 ネットワークメタアナリシスの方法論的研究も別途進めている。NMAのエビデンスの質を評価する数量的手法を洗練させた研究論文はほぼ完成したので、2015年度中に投稿したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画書に示したとおり複数の国際共同研究として実施しているため初年度に海外出張を予定していたが、研究代表者の体調不良のため2014年度中に実施できず、代わってスカイプミーティングを頻用した。
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次年度使用額の使用計画 |
しかし、スカイプでの討議は対面での討議の密度には及ぶことが出来ないので2015年度に討議研究のための海外出張を予定している。
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備考 |
複数のNMAのプロトコルにアクセスできます。
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