研究課題/領域番号 |
26670315
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中山 健夫 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70217933)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 疫学 / 予防医学 / 医療情報学 |
研究実績の概要 |
国内でもモデル的な地域において、基幹病院を中心に診療所、薬局等の連携を進める医療情報ネットワークが発展しつつある。しかし、現行システムは、複数の医療機関の情報共有による診療向上(Business to Business: B2B)が主眼であり、地域を基盤とした疫学研究に応用(Business to Research: B2C)された例は無い。また医療機関間の情報共有に際して、住民・患者自身にも必要な情報が提供・共有される(Business to Consumer: B2C)という視点は乏しい。本研究は、地域基幹病院における診療情報の電子化を基盤として、これまで不十分であった疫学研究への展開と住民・患者への情報提供・支援という新たな価値付加を目指して、生涯電子カルテ(Electronic Health Record:EHR)システムの開発と実装による課題抽出・解決策の提示に取組むことを計画している。 対象地域である滋賀県長浜市では、京都大学医学研究科と市が協定を締結して2007年以降、コホート研究を継続しており、本課題では、地域基幹病院から電子的に抽出した情報のコホート研究の発症調査としての利用を想定している。初年度は、対象として想定している滋賀県長浜市の市立長浜病院と長浜赤十字病院、市役所との調整を進めた。平成26年7月から導入された滋賀県による「びわ湖メディカルネット」に両病院とも参加しており、診療情報を抽出する情報基盤としてID-Linkのシステムを採用している。本課題では、ID-Linkのシステムにmapperを付加することで両病院の診療情報の様式に応じた適切なデータ抽出のシステムについて、関係者間での課題の共有と解決に向けた協議を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に装着を予定していた市立長浜病院・長浜赤十字病院での電子情報抽出のためのシステム(mapper)と、それを用いたデータ抽出試験が延期されたことにより、当初計画の達成がやや遅れている。計画の延期は、両病院の関係者から、診療情報の電子的抽出と研究目的での外部提供について、主に個人情報保護に関して、当初想定していたよりも具体的なルールの作成が必要との指摘があり、システムの導入に当たっては、さらなる課題の検討と合意形成が必要と判断したためである。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に指摘された課題の検討と解決策の提示に向けて、代表研究者・連携研究者は、病院関係者だけでなく、長浜市役所、長浜市でゲノムコホート研究を進める共同研究者とも意見交換を重ねて、対応を進めている。コホート研究の事業運営委員会でも、2病院からの電子的な情報収集を進める旨の覚書の承認を得た。診療情報の電子的抽出による具体的な研究利用として想定しているながはまコホート事業では、参加者1万82人が、疾病発症の把握目的での診療情報へのアクセスに同意しており、基本的な方針については京都大学医の倫理委員会、長浜市事業審査会でも審査・承認を得ている。これらの関係者の合意を基盤として、実際の作業に携わる病院関係者とも認識を共有し、所期の目標の達成に向けて諸作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、平成26年度に装着を予定していた市立長浜病院・長浜赤十字病院での電子情報抽出のためのシステム(mapper)と、それを用いたデータ抽出試験が延期されたことによる。計画の延期は、両病院の関係者から、診療情報の電子的抽出と研究目的での外部提供について、主に個人情報保護に関して、当初想定していたよりも具体的なルールの作成が必要との指摘があり、システムの導入に当たっては、さらなる課題の検討と合意形成が必要と判断したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
市立長浜病院・長浜赤十字病院との協議を進め、各病院の情報システムに応じてMapperを装着し、データ抽出試験を進める。2病院でのMapperによるデータ抽出試験には2年度に繰り越された研究費を充てる。各病院の診療情報から、実際に電子的に抽出可能な内容を確認することで、既に実施している病院からの直接採録によるコホート研究の発症調査に要する情報と照合し、研究利用の可能性と課題を整理し、解決策を探る。
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