人びとの健康行動の持続的誘発には、対象属性に応じたコミュニケーションが重要である。広告医学という新規概念を提案し、デザインやコピーライティングなどといった、わかりやすく、人々に影響を与える広告的視点を取り入れることで、生活する人々の行動変容を実現するコミュニケーション研究を進めている。 本研究では、広告医学の基礎概念実証を目指し、大きく4つの事業を推進した。①企業における健康組合における課題調査および、グループインタビューの実施、②最も重要な健康課題の解消を目指すコミュニケーションデザインの開発、③企業従業員に対する効果測定の実施、④一般向けの公開講座の実施によるアウトリーチ活動の実施、の4点である。当初は、減塩行動を想定していたが、運動量の増加を目指し、メタボへの対応を目指す取り組みへの要望が強かったため課題設定は、歩行数の増加および、メタボの意識改善の2点に絞り込み事業を推進した。最も重要な成果としては、内臓脂肪の蓄積を簡単な手法で警告する衣服を開発し、知財を出願した。さらに、対象企業における動線分析を行い、階段の昇降を中心に歩行を促すPOP・ポスター、ステッカー、ウェブサイトなどをデザイナーとともに開発、効果的な配置で設置した。これらの介入効果をウェラブルデバイスにより定量評価をしたところ、一日あたり40歩程度の階段登りが上昇することが判明した。興味深いことにこの変化は、被験者の属性に応じて異なっているということも示唆された。以上の成果は、中間報告を兼ね、パシフィコ横浜にて一般の方向けの対話型セミナーを実施し、好評を得た。一部は、webニュースに取り上げられるなどの反響があった。 本年度における成果を礎に、今後も広告医学の概念に基づくアイテム開発・実証実験を継続していくことで、疾病予防に大きく寄与する独創的なコミュニケーション手法が生み出されるものと期待される。
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