研究実績の概要 |
慢性心不全は高齢者に多く全ての心疾患の終末像であり、その予防が極めて重要である。しかし、特定健診になって以来、心電図検査および胸部レントゲン写真が必須項目から外れ、心不全が顕性になるまで放置されることが懸念されている。心不全になると脳心腎連関により、互いに増悪させてしまうため、心不全は顕性になる前にできるだけ早期に予防を行うことが極めて重要である。しかし、心不全を簡便に推定可能なナトリウム利尿ペプチド(hANP、BNP)と頸動脈硬化との関係についての成果がこれまでにない。そこで、不顕性・顕性心不全の有所見率、ナトリウム利尿ペプチドとその後の循環器病リスクファクター及び頸動脈硬化の推移について明らかにし、心不全、循環器病の予防を資するための資料を作成することを目的とする。 平成元年に性年齢階層別無作為抽出された方で、2006年~2009年度にかけて健診受診し研究用の採血に同意された方で、健診受診年の古い方を選択して重複者を除外した3,239名を対象とする。健診に合わせて生活習慣問診を実施し、血漿(トラジロール入EDTA血漿)採血を行い、hANP、BNPを測定した。hANP 43pg/mL以上をhANP高値、BNP 100 pg/mL以上をBNP高値とする。hANP高値の割合は40~90歳代にかけて男/女の順に、2%/16%, 4%/7%, 10%/17%, 31%/34%, 45%/56%, 83%/79%で、BNP高値の割合は40~90歳代にかけて男/女の順に、4%/3%, 3%/4%, 10%/14%, 29%/27%, 47%/48%, 75/68%であった。hANP、BNP高値において、男女の高血圧群、女性の糖尿病群の割合が多く見られた。
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