研究課題/領域番号 |
26670321
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
荒木 敦子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 准教授 (00619885)
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研究分担者 |
三井 貴彦 北海道大学, 大学病院, 助教 (90421966)
池野 多美子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (80569715)
GOUDARZI Houman 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 学術研究員 (40713607)
伊藤 佐智子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任助教 (90580936)
宮下 ちひろ 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (70632389)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境 / 衛生 / 遺伝子 / 性腺機能 / 第二次性徴 |
研究実績の概要 |
「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ:札幌コーホート」には母児514組が登録している。フタル酸エステルへの胎児期曝露による性腺機能への影響として、最も使用量の多いDEHP(di(2-ethylhexyl)phthalate)について、測定済みの母体血中フタル酸エステル類代謝物濃度の代謝物MEHPと出生時の性ホルモン濃度への影響を検討した。男児では母体血中MEHP濃度と性ステロイドホルモンのうち、プロゲステロン(P4)とテストステロン(T)/エストラジオール(E2)比とは負の相関を示し、MEHP濃度を四分位にしたモデルでも、濃度が高い群でプロゲステロンは有意に減少して量‐影響関係を示した。一方、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)とは正の相関を示したが、四分位のモデルでは量-影響関係の傾向は示したものの統計学的有意ではなかった。In vitroでDEHP曝露が多いと、17α-hydroxylase-17、20-desmolase、3βHSDおよびアロマターゼの発現量が減少しステロイド代謝が阻害され、E2減少に先立ちP4、アンドロステネジオン、T産生が減少することが報告されているが(Hannon et al.,2015)、ヒトの胎児期曝露でも児の性ホルモンに類似の影響が見られた。また、男児で、MEHP濃度と精巣のライディッヒ細胞から分泌されるInsulin-like factor 3(INSL3)、およびセルトリ細胞から分泌されるInhibin B濃度と負の相関を示し、MEHP濃度を四分位にしたモデルでも濃度が高い群でInhibin BとINSL3は有意に減少した。ヒトのDEHP胎児期曝露は、ライディッヒ細胞とセルトリ細胞の分化や増殖への影響が示唆された。平成27年度には、DEHP曝露が第二次性徴発来に及ぼす影響を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、児の第二次性徴発来について、調査に参加している児に調査票を配布して身長・体重およびTanner分類で評価する予定である。Tanner分類は思春期の発来について外性器の発達段階をもとにしているため、思春期の児に対して陰茎増大、陰毛発生、乳房発達などのデリケートな内容を問う必要がある。既に英国の出生コーホートでは調査参加者にTanner分類に関する自記式調査票を行っている実績があり、これらの調査を参考に調査票の準備を進めてきた。一方、北海道スタディではこれまでは保護者へのインフォームドコンセントを得ていたが、思春期の児を対象にした本研究では、子ども自身が調査票に記入したり、保護者と相談のうえで調査票に回答をする可能性がある。そこで、子どもを対象とした「インフォームド・アセント」の実施についても議論をおこない、倫理面において慎重な調査推進を検討する必要があった。このため平成26年度に実施予定であった調査票の発送が平成27年度になり、結果として達成度がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に予定していた調査参加登録者も含めて、平成27年度に第二次性徴発来調査への協力を依頼し同意を得る。調査では子どもを対象としたインフォームドアセントも実施し、調査票の内容については保護者にみられたくないと考える場合には封緘できる封筒を用意するなど、子どものプライバシーに配慮する。調査票とともに採尿キットを送付することで、思春期の尿を収集する。尿中フタル酸エステル類代謝物の測定を実施し、学童期の曝露を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
思春期の児を対象にした本研究では子どもを対象とした「インフォームド・アセント」の検討など、倫理面において慎重な検討を行ったため、平成26年度に実施予定であった調査票の発送や学童期の曝露評価に用いる尿収集が平成27年度に遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に使用予定だった調査票の印刷や郵送費が未使用となり、次年度使用額が増額となった。平成27年度には、平成26年に予定していた調査参加登録者も含めて、第二次性徴発来調査を行う。
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