研究課題
可塑剤として使用されるフタル酸エステル類は、内分泌かく乱作用が懸念さる合成化学物質である。動物実験では雄の生殖器系への有害作用が知られている。ヒトでは、胎児期曝露による男児の性ホルモンや肛門性器間距離への影響、横断研究で女児の第二次性徴早期発来の報告があるが、胎児期曝露から第二次性徴発来まで検討した報告はほとんどない。本研究では、フタル酸エステル類DEHPの母体血中濃度と、児の性ホルモンおよび第二次性徴発来(以下発来)への影響を検討した。札幌コホートの9-14歳329名に第二次性徴発来調査票を送付した。男児では身長の急伸、Tanner分類を基に陰毛発毛と声変わり、女児では乳房発育、陰毛発毛、初経のうち、いずれかの開始を発来とした。回答を得た147人のうち、男児59人(80%)、女児57人(92%)が発来しており、その平均±SD月齢は男児137.7±10.6、女児127.2±12.2だった。男児は、母体血中MEHP濃度が2.71乗になると発来時期は7.0カ月遅延した。女児ではMEHP曝露と発来時期との関連はなかった。男児においては、臍帯血中のAndrostenedione濃度が2.71倍になると、発来時期が11.3カ月、女児ではプロラクチン濃度が2.71倍になると発来時期が10.6カ月早まった。いずれのホルモンもMEHPから発来への介在要因として統計学的有意な関連は得られなかった。男児ではMEHP曝露による発来時期の遅れがみられたが、出生時の性ホルモン以外の要因による影響と考えられた。しかし、MEHP濃度、性ホルモン濃度、発来のデータが揃うサンプル数は男児では25人、女児では31人と少なく、十分な統計学的パワーが得られなかった可能性もある。本研究では、第二次性徴発来調査と共に児の尿を収集しており、今後尿中フタル酸エステル類代謝物濃度を測定し、生後の曝露による影響も検討する。
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