研究課題
タンパク質におけるαへリックス構造は、それぞれのタンパク質の機能を発揮する上で重要な働きを担っており、創薬開発のための標的構造として注目されている。しかし、膨大な数のαへリックス構造から創薬の標的となり得る分子構造を同定しそれを制御することは困難な状況にある。申請者はこれまでにGPCRファミリーに属するケモカイン受容体CCR2およびCCR5に結合する新規分子フロントを見出し、フロントが受容体シグナルを中心的に制御していることを見出した。フロントは受容体の7回膜貫通部以降の細胞内のαヘリックス(ヘリックス8)近傍領域へ特異的に結合しており、このヘリックス8近傍領域は様々なGPCRにおいても重要な働きを担っていることが報告されている。そのため他のGPCRにおいても、CCR2およびCCR5におけるフロントの結合領域に相当するヘリックス8近傍領域配列が、各受容体シグナルに重要な働きを担っていることが期待される。そこで本研究では、フロントの結合領域として同定した領域に相当する他のGPCRのヘリックス8近傍配列に着目し、その受容体シグナルを制御し創薬標的となりうるαへリックスを探索することを目的とする。今年度は、細胞遊走因子ケモカインの受容体であるケモカイン受容体ファミリーに着目し、細胞遊走活性を指標として、ヘリックス8近傍領域の有用性を検証する評価系を構築した。フロントの結合領域をin vitroの相互作用評価法にて解析し、最適化した配列に相当する各受容体のヘリックス8近傍領域配列を抽出した。ペプチドの膜透過性の付加に際しては、効率よく細胞に導入できる複数の手法を検討した。これにより細胞遊走活性を低下させるαへリックスペプチド1つを見出した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り、評価系を構築し遊走を低下させるαへリックスペプチドを同定した。
今回見い出した細胞遊走を低下させるαへリックスペプチドの作用機序を解析すると共に、新たなαへリックスペプチドの探索も実施する。
標的配列の絞り込み、および、細胞内へのペプチド導入法の検討が計画以上にスムーズに実施できたため、これらの検討のために計上していた試薬の購入費用が抑えられた。
合成するペプチドの種類を増やすことによりさらに詳細な比較解析を実現するなど、本研究の基盤づくりおよび検証の強化に充てる。
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