研究課題/領域番号 |
26670327
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大迫 誠一郎 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00274837)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 尿道下裂 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
人の集団における男児外陰部異常症と化学物質曝露の関連性が指摘されて久しい。この件について検討するため、尿道下裂患者手術時に微量採取される「新鮮包皮サンプル」を利用、回収できるトータルRNAとゲノムDNAを用い、まず、曝露指標となるバイオマーカー遺伝子群のmRNA発現レベルと発症に関与すると考えられる性ホルモン関連遺伝子群の発現レベルを比較し、疾患との相関性を検討した。さらにエピジェネティックな変化と疾患との関連性も検討するため関連遺伝子のDNAメチル化を測定するとともに、曝露バイオマーカーとの相関性を検討した。尿道下裂患者の手術時に採取した包皮サンプルと比較対照群として用いた埋没陰茎患者サンプルを用いて薬物代謝酵素とステロイド合成酵素の発現解析を行った。その結果、尿道下裂、埋没陰茎ともにCYP1A1とCYP1B1の発現レベルに群内での有意な相関関係が認められた。また、CYP1B1発現レベルは尿道下裂患者で埋没陰茎より高い傾向にあった。皮膚における薬物代謝酵素発現はPAH等の曝露レベルを反映するとの報告がラットなど一部の動物種で報告されており、今回の結果は疾患と曝露との関連性を示唆しているかも知れない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尿道下裂患者の手術時に採取した包皮サンプル(n=23)と比較対照群として用いた埋没陰茎患者サンプル(n=16)を用いて、薬物代謝酵素とステロイド合成酵素の発現解析を行った。CYP1B1 mRNAレベルが尿道下裂群で埋没陰茎群より有意(P<0.001)に高い傾向にあるという所見を見出した。一方、AR mRNAレベルは尿道下裂群で埋没陰茎群より有意(P<0.001)に低かった。また、尿道下裂、埋没陰茎ともにCYP1A1とCYP1B1の発現レベルに群内での有意な相関関係(P<0.001)が認められた。皮膚における薬物代謝酵素発現はPAH等の曝露レベルを反映するとの報告がラットなど一部の動物種で報告されており、今回の結果は疾患と曝露との関連性を示唆しているかも知れない。この結果を米国内分泌学会誌に投稿したがリジェクトされた。その理由として、対照群に埋没陰茎を用いており比較対象とならないというものであった。レフリーからの提案では、「割礼」を行っているような他国から正常包皮サンプルを入手し、正確な対照群にすべきとの示唆があった。
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今後の研究の推進方策 |
米国内分泌学会誌に投稿したがリジェクトされた理由を鑑み、今後、「割礼」を行っているような他国から正常包皮サンプル入手を試みる必要がある。国内医療機関での入手は不可能である。しかしこれは国際的共同研究の足がかりとなろう。またその際、術時の年齢が1歳児以下であることが条件となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文リジェクトを受けて、指摘項目にはすべて対応しきれないものの、曝露レベルの推定をさらに行うため、発現解析を追加で実施するため。
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次年度使用額の使用計画 |
一部の解析用試薬と投稿費用に充当させる。論文受理までが期限であるため、最長平成28年度一年間を使用期限とする。
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