研究課題
グローバル化が進み、社会共進化に伴って伝統的に好まれてきた近親婚が衰退し始めている。近親婚を好む社会では、非近親婚と比べて多産の傾向がある。グローバリゼーションが進み多産から少産に移る過渡期に、このような近親婚を好む社会的慣習が残っている人類集団において、母親もしくは父親の配偶者選択が出自集団の繁殖に及ぼす影響を、ヒト個体群別に生物学的側面から調査解析することを目的とする。対象集団は、インドネシア・ヌサトゥンガラ諸島から選定し、スンバ島とその近隣の島々から抽出することとした。近親婚を好む社会制度が現在も維持されている地域において、縦断的な人口センサスを収集した。これまでに生んだ子どもの出生年、性別、子どもの生存年数、子供を設けた異性の数、子どもの世話(同居)の有無、パートナーとの同居期間、パートナーとの血縁関係、自身の両親の血縁関係、について聞き取り調査を継続した。静脈血もしくは指先穿刺による濾紙血を収集し、DNAを抽出後、母親、父親、子、それぞれについて母親由来のミトコンドリアDNAと父親由来のY染色体のジェノタイピングおこない、シークエンス多様性を調べる。母親もしくは父親の繁殖行動が子どもの生存と配偶者選択に及ぼす遺伝的影響と社会的要因を検証する。また、パートナー間のHLAハプロタイプを同定し、ハプロタイプ類似度を世代間で比較する。親と子それぞれのハプロタイプが、子の配偶者選択において異なるハプロタイプを好むかどうかについて検証する。この検討により血縁婚がヒトの繁殖行動にもたらす生物学的意義について、科学的な実証を試みる。
2: おおむね順調に進展している
調査対象地での新たな研究協力者を、インドネシアのティモール島・クパン県、スンバ島・西スンバ県、ロンボク島・中央ロンボク県からそれぞれ得ることができた。
計画ではキサ島を対象地としていたが、現地へのアクセスや研究協力者の現況を考慮して、サヴ島もしくはロンボク島において新たな対象者を募る計画である。新しい対象地における研究倫理審査について承認を受けることが先決である。
新しい対象地の選定のため、現地調査を追加した。一方で、分析試料の収集が遅延し、実験室での分析が未完了ため、次年度使用額として残した。
実験室における試料の分析に使用する。
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