研究課題
近親婚を好む社会は、グローバル化が進み、社会共進化に伴って衰退し始めている。研究代表者はこれまでに、近親婚は非近親婚と比べて多産の傾向がある一方で、成人前に死亡する数も多い傾向があることを示した。また、配偶者選択において自身に類似する顔をパートナーとして好むかどうかの検証もおこなった。現在、多産から少産に移る過渡期に、このような近親婚を好む社会的慣習が残っている人類集団において、母親もしくは父親の配偶者選択が出自集団の繁殖に及ぼす影響について、遺伝学的な側面から解析することを目的とする。近親婚を好む人類集団では、heterogeneousな集団と比べて、配偶者選択が遺伝的多様性に及ぼす影響が大きい。このような集団では、社会的慣習として自己の意思に寄らない婚姻も多いため、離別も多く、きょうだいは異胞である場合が多い。今年度は、集団内における繁殖行動が子孫の遺伝的多様性を実際に高めている仮説について検証を試みる。対象集団は、血縁婚を好むヒト集団で、インドネシア・ヌサトゥンガラ諸島のスンバ島のスンバ人とした。繁殖行動に関する情報は現地で聞き取り調査により収集した。DNA試料は凍結した全血から抽出した。個体差を生じる因子として、後天的な遺伝子修飾機構に着目し、DNAメチル化解析の手法についての検討に着手した。MeDIP microarrayを用いた網羅的なCpGメチル化解析、バイサルファイトシークエンスによるメチル化部位の同定、遺伝子発現変動との関連について分析方法を開発中である。
3: やや遅れている
研究代表者が研究機関を異動したため、研究環境が一変し、当初に計画通りに進まなかった。一方で、新しい実験手法への取り組みを開始し、分析対象の拡充へとつながっている。
今年度はDNAメチル化の網羅的解析について新しい研究手法と技術取得に精力を注いだおかげで、先駆的な分析に挑戦することができている。ヒトのメチル化解析の技術は未だ発展途上であるので、情勢を見極めて効率的な手法を鋭選択し、既収集のDNA試料で新しい分析を試みる。
平成28年度に、インドネシアで収集したヒト試料のゲノム解析を実施し、その結果を基に成果発表する予定であったが、国外での倫理申請が滞り、研究代表者の研究機関変更に伴い予定とは異なる業務に忙殺され、新規ゲノム解析の開始が遅れているため、計画を変更し既存データの解析を行うこととしたので未使用額が生じた。
このため、新規のゲノム解析と成果発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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