婚姻に関する社会的規制がヒト集団内において繁殖行動にもたらす生物学的意義について分析する目的で、近親婚を好むインドネシア・東ヌサトゥンガラ州の人類集団を対象に、母親もしくは父親の配偶者選択が出自集団の繁殖に及ぼす影響を調査した。近親婚は非近親婚より多産で、死亡する子の数も多かった。近親婚による両親から生まれた子は、異質な遺伝子ハプロタイプに富む集団と比べて、配偶者選択が遺伝的多様性に及ぼす影響が大きく、親によるアレンジ婚では異胞きょうだいが増えることも示唆された。このような社会規制や繁殖行動が家系内への異質素因の取り込みに寄与し、多様性の損失を回避させている可能性が示唆された。
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