研究課題
我々は、既報の慢性疼痛家系と明らかに異なる遺伝性慢性疼痛 (①乳児期からはじまり青年期に寛解する、②周期的に、③四肢大関節に痛みを伴い、④寒冷曝露で悪化し温熱曝露で改善し、⑤他合併症を伴わず、⑥炎症性鎮痛剤(NSAIDs)が症状を軽減する) をしめし、その表現型を常染色体優性遺伝形式で伝える家系4家系を見出した。これら家系に、次世代シークエンサーと連鎖解析を併用し遺伝子を同定するとともに、Knock-in mouseを作成し機能解析を行う。さらに高齢者での痛みの寄与についても検討する。これらを通じて、高齢者の疼痛の新たな予防とtranslational researchに道を開く。上記を目的に、本年度は下記の通り研究を進めた。1)遺伝解析:2016年度に本遺伝性疼痛の原因としてNav1.9 R222H、R222S変異を見出した。2016年度に引き続き24家系の患者の解析を行った。その結果東北地方の5家系でNav1.9 R222H変異が見出された。また、Nav1.9の全エクソンの解析で、新たに3変異を見出した。そこで、変異の認められない15家系について、全ゲノムシークエンスを行い、SCN9Aの変異を1家系で見出した。2)臨床的特徴付け:予想される遺伝子の神経組織での分布を参考に、種々の臨床的特徴付けを行った。痛み部位に皮膚温の変化が認められ、寒冷曝露で誘発され、成人期に寛解した。消化器症状は明確ではない。3)Knock-in mouse:同定された遺伝子のマウス相同遺伝子を見出し、ヒトに相同な部位に変異を入れる。ヒトの変異に相同な変異を導入したマウスを得た。R222Sについては後根神経を用いた検討で、興奮閾値の低下が証明された。
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