研究課題/領域番号 |
26670334
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
大平 哲也 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50448031)
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研究分担者 |
木山 昌彦 公益財団法人大阪府保健医療財団大阪がん循環器病予防センター(予防推進部・循環器病, その他部局等, その他 (10450925)
山岸 良匡 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20375504)
今野 弘規 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90450923)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | うつ症状 / 糖尿病 / 疫学研究 / 心身連関 / 危険因子 |
研究実績の概要 |
近年の都市部を中心として循環器疾患の発症率の増加には、欧米化したライフスタイルに加えて社会心理的ストレスの増加の影響が考えられる。社会心理的ストレスは肥満、糖・脂質代謝異常の原因になるだけでなく、肥満、糖・脂質代謝異常を有することがうつ症状、社会的不適応、睡眠の量・質の低下の誘因になる可能性が考えられるが、こうした心身連関を前向き疫学研究によって検討した報告は殆どない。そこで、本研究は長期間疫学研究を実施している地域・職域集団を対象として、社会心理的ストレスと肥満、糖・脂質代謝異常との心身連関を前向きに検討することを目的とした。 秋田県I町及び大阪府Y市M地区住民の内、2007年~2008年に健診を受診した4,780人(男性1,786人、女性2,994人、平均年齢59歳)を研究対象とした。対象者には、健診受診時に、質問紙にてうつ症状の有無を調査した。うつ症状は、スクリーニングテスト用の調査票PRIME-MDをもとに、興味の欠如、気分の落ち込みがともに「はい」と回答した場合に「うつ症状あり」と定義した。うつ症状なしに対するうつ症状ありの群の糖尿病、高血圧、脂質異常のオッズ比をロジスティック分析により検討した うつ症状との関連を性、年齢、肥満度を調整した上で検討した結果、「うつ症状なし」の者に比べた「うつ症状あり」の者の糖尿病、脂質異常、高血圧、メタボリックシンドロームのオッズ比は、それぞれ1.54(95%信頼区間:0.98-2.43)、1.36(1.00-1.86)、0.99(0.75-1.32)、1.40(0.90-2.17)、であった。また、うつ症状は将来の糖尿病発症とも関連がみられた。したがって、うつ症状は特に糖尿病発症の危険因子であることが示唆された。これらの結果は、特定健診における社会心理的ストレスの評価の重要性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の本年度は、コホート研究におけるベースラインデータセットを作成し、心理的因子とメタボリックシンドローム構成因子との関連を横断的、縦断的に検討することを予定した。現在これらの作業はほぼ終了しており、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である社会心理的ストレスと肥満、糖・脂質代謝異常との心身連関を前向きに検討するために、昨年度までに社会心理的ストレスが肥満、糖、脂質異常等の発症と関連するかどうかについて検討を行った。 今後は、肥満、糖、脂質異常が将来のうつ症状の発症と関連するかどうかについて以下の検討を行う。 対象集団3地域においては2006年から2010年の間に、職域においては2001年から2005年の間に毎年実施している健診を受診した者を対象としてベースラインデータの構築を行う。次に、対象者からうつ症状を有する者を除外し、残る者を対象として、2015年までの追跡調査を実施する。これにより、社会心理的ストレスと肥満、糖・脂質代謝異常との心身連関が双方向性に前向きに検討でき、我が国の生活習慣病の予防対策に加え、精神疾患の予防対策においてもエビデンスに基づいた新しい方策の資とすることが可能になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
茨城県における調査の実施が翌年になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
調査旅費、アンケート印刷代
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