研究課題/領域番号 |
26670341
|
研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
平野 靖史郎 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 室長 (20150162)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 粒子状物質 / マクロファージ / エンドサートーシス / 貪食レセプター / インフラマゾーム |
研究実績の概要 |
繊維状粒子状物質は、通常の球体形状の粒子と異なり、粒子の計測方法も確立していない。しかし、細胞や組織の粒子に対する反応性は、粒子表面の物計測量と強く関連することが予想されることから、粒子のキャラクタリゼーションと培地への分散方法、細胞への曝露方法を検討した。細胞として粒子状物質のターゲット細胞である肺胞マクロファージ、およびマクロファージの貪食レセプターであるMacrophage Receptor with Collagenous Structure (MARCO)を安定的に発現させたCHO細胞を用いた。細胞膜に発現したGFP-MARCOは、macropinocytosisにより細胞内に取込まれていることが観察されたが、この取込み作用はcytochalasin Dにより阻害された。オートリソゾーム阻害剤の添加により、LC3-IからLC3-IIへの変化(lipidation修飾)が検出されたが、この時GFP-MARCOがpunctateを形成し、またオートファゴソーム形成に必要なLC3B、あるいはオートリソゾームを構成するLAMP2とそれぞれ共局在していることが明らかとなった。このpunctateの形成は、cytochalasin Dでは阻害されなかったが、dinasoreの添加により阻害された。また、nocodazolはpunctateを凝集させたが、punctateの形成は阻害しなかった。以上のことより、環境粒子の貪食に中心的役割を担うMARCOが、エンドサイトーシスを介してオートファジー形成に関与していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加熱処理によりエンドトキシンを除去した多層カーボンナノチューブ,酸化チタンウィスカーを細胞に曝露して、細胞障害性を調べた。粒子のレセプターを介した細胞内取り込みに関して、細胞骨格を形成するアクチンや中間フィラメントなどのタンパク質についても解析を行なった。米国毒性学会において、シンポジウム(Immune Responses to Different Classes of Inhaled Particulates: Unique vs. Shared Responses and Mechanisms)を企画し、関連する研究成果である様々な粒子状物質に対する一次免疫反応や炎症過程に関する発表と総合討論を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
ナノファイバーを曝露した細胞においては、粒子が細胞内に完全に取り込まれない完全貪食(Frustrated Phagocytosis)や、ファゴゾームと細胞内オルガネラであるリソゾームとの融合が完全でないためにリソゾーム膜が障害を受け、インフラマゾームが形成され様々な炎症反応が惹起されるものと推測される。このことから、GFP蛍光標識した細胞膜を持つ細胞貪食(GFP-MARCO)を用い、またリソゾーム(Lysosome-associated membrane protein 2, LAPM-2)を免疫蛍光標識して、貪食途中過程にあるナノファイバーとこれらタンパク質の局在性を蛍光顕微鏡、あるいはレーザー共焦点顕微鏡を用いて調べる。 また、インフラマゾームの形成をcaspase-1の活性化を指標としてwestern blottingにより調べるほか、ELISAを用いてインフラマゾームのベンチマークである熟成型IL-1betaの産生量を調べる。 さらに、陽性対照として、尿酸ナトリウム針状結晶をBIORUPTORで処理して用いる。これらのナノファイバーを細胞に曝露し、IL-1beta産生量を調べることによりインフラマゾームの活性化の程度を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
347円というきわめて少額であり、特に理由はない。
|
次年度使用額の使用計画 |
少額であり、試薬などに有効に使用する予定である。
|