ネオニコチノイド系殺虫剤(NEO)は、農業だけでなく日用品などにも幅広く使用されている生活に密着した化学物質の一つである。近年、ミツバチ大量死の原因の一つではないかと注目され、また、有機リン系殺虫剤による曝露と子供の注意欠陥多動性障害との関連性が報告されていることから、類似の作用機序をもつNEOについても子供への健康影響が懸念されている。未だ発展途上である個人レベルでの曝露評価システムを構築するためには、NEO曝露を迅速かつ精密に測定できる分析法の開発が必要不可欠である。そこで本研究では、様々な食品が混在した食事からの摂取状況の把握、曝露評価に活用できるNEO及び代謝物の高感度分析法を構築することとした。平成26~27年度は、アセタミプリド始め10種のNEO及び5種の代謝物を対象とし、様々な食品が混在した弁当類にも適用可能な分析法を検討した。その結果、試料を予冷式ドライアイス凍結粉砕法により細切均一化後、酢酸酸性下でn-ヘキサン及びアセトニトリルを用いてホモジナイズ抽出し、ゲル浸透クロマトグラフィー、次いで固相ミニカラムにより精製して、LC-MS/MSにより定量する分析法を構築した。本分析法については、厚生労働省ガイドラインに従って妥当性評価を実施し、良好な結果を得た。平成28年度は、日本人が多く摂取している米について、検出率の高いNEOのジノテフランを選択し、精米、米とぎ及び炊飯といった加工調理後の消長を調査した。市販されている玄米25検体中10検体からジノテフランが検出され、その平均値は0.043 mg/kgであり、残留基準値(2 mg/kg)と比べて十分に低い値であった。各調理過程後のジノテフランの残存率(%)(玄米を100%として換算)は、白米75%、洗米61%及び炊飯白米40%であった。今回の調査により、精米による米ぬかの除去、炊飯といった加工調理を経ても、ある程度の残留が認められることが明らかとなった。
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