研究課題/領域番号 |
26670348
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
稲井 邦博 福井大学, 医学部, 講師 (30313745)
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研究分担者 |
法木 左近 福井大学, 医学部, 准教授 (30228374)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リスクマネージメント / 病理解剖 / オートプシー・イメージング / 死因 / 医療関連死 / 環境調査 |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は、①死のプロセスに着眼しそれに関連性の高い医療行為を探索して、基礎疾患別に医療事故死に繋がる危険な医療行為を抽出して「重要な経緯・転帰」を意味する介在死因と関連する医療行為を探索することと、②病理解剖が実施できない施設で死因究明を進めるため、オートプシー・イメージング(Ai)の安全な活用を目指し、Ai実施前後環境測定を実施し、一般医療機関で安全にAiを実施するための医療環境制御指針を策定することにある。 当該年度は、福井大学医学部附属病院で1990年以降に実施された病理解剖の死因を基礎疾患別に抽出し層別化することで、全死亡の3-5割の直接死因が感染症に起因することを見いだした。さらに呼吸器感染症を含む呼吸不全の90%強が、Aiで検出可能であることを明らかにした。この結果は日本感染症学会総会で報告し、座長推薦演題として現在論文執筆中である。 また、約90遺体のAi撮影前後で、空中浮遊菌、微粒子、悪臭並びにCTベッドの付着菌の動向を検討し、警察遺体(司法解剖・新法解剖)のAi撮影時には、院内死亡遺体(病理解剖)に比較して、有意に空中浮遊菌と悪臭が増加すること、浮遊菌には免疫不全患者に病原性を示すものが含まれること、悪臭の程度と消失時間に正相関が有ることを見いだした。現在、経年変化を捉えるために継続研究中で、次年度下期には論文執筆が可能となる状況にある。 さらに、新学術領域研究「多元計算解剖学」の計画班・分担研究者として、Ai画像から遺体の死後経過時間を推定するプロジェクトを、医用工学研究者と共同で推進しており、いくつか有望なパラメータが抽出されてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の主目的である、医療関連死に繋がる「重要な経緯・転帰」を明らかにするために、病理解剖症例の死因プロセスを層別化することを行い、直接死因に繋がる重要なプロセスを明らかにすることが出来た。現在、予期せぬ医療関連死(重篤な転帰を伴うオカレンス症例)の背景因子を鋭意検討中であり、概ね順調に推移している。 また、2015年8月下旬よりAi撮影に伴うCT撮影室の環境調査に着手し、病院外からの持ち込み遺体(警察遺体)では、院内死亡遺体に比べ環境汚染が有意に進むことを見いだした。遺体の損傷は気温などの外的要因による点も多いことから、年次推移の検討を明らかぬするため、鋭意調査を実行しており、研究期間内に終了可能な状況であり、この点も概ね順調に推移していると考えている。 さらに、Ai画像からの死後経過時間推定に関して、動物実験既に終了して共同研究者が論文執筆中である。また、ヒトのAi画像からの推定は、医用工学研究者と共同研究を鋭意遂行している。この点からも、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主体は観察研究で、症例の更なる蓄積と稀少症例の解析が重要である。そのため、次年度においても当該年度に引き続き、より多数での解析を推進する必要がある。 また、医療環境調査に関しては経年変化を明らかにした後に、施設汚染対策を検討する必要が出てきた。具体的な手法については現在予備的検討を行っており、次年度後半から着手する予定である。 医用画像は貴重な医療研究資源であることから、共同研究者と密に連携を取り研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
画像解析研究遂行に必要な新型の正方形型ディスプレイ(定価120,000円)購入を検討していたが、販売開始がが2015年2月以降と遅れたため、会計計算上年度内の購入が困難となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度早期に購入する予定としている。
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