本研究は、①死のプロセスに着眼しそれに関連性の高い医療行為を探索して、基礎疾患別に医療事故死に繋がる危険な医療行為を抽出して「重要な経緯・転帰」を意味する介在死因と関連する医療行為を探索すること、②病理解剖が実施できない施設で死因究明を進めるために、オートプシー・イメージング(Ai)の安全な活用を目指し、Ai実施前後に検査室の環境測定を実施し、一般医療機関で安全にAiを自死するための医療環境制御指針を策定することにある。 当該年度は、福井大学医学部附属病院で死亡し病理解剖された478例から介在死因を抽出して解析し、13カテゴリー(腫瘍浸潤、免疫不全・化学療法、感染症、肺障害、大量出血、脳血管障害、消化器障害、低栄養・転倒・外傷、手術デバイス、心肺停止・呼吸停止)に集約される計38個のcriticalなイベントを明らかにし、13の基礎疾患別に発生頻度の高い介在死因を決定し、医療の質・安全学会学術総会で発表した。現在論文執筆準備中である。 次に、院内死亡症例の直接死因究明に果たすAiの有用性を明らかにするため、Aiと病理解剖が実施された50例を解析して、院内死亡症例の70%超がAiで直接死因が明らかになること、またAiの直接死因診断精度は臨床医の診断より有意に高いことも解明した。この成果はVirchows Archに掲載された。 さらに、2014年9月~2015年8月にかけて法医・新法解剖102例、病理解剖28例のAi実施時に、空中浮遊菌の撒布状況、悪臭発生状況、微粒子の拡散状況を定量解析し、前者のAiではいずれのパラメータも有意に増加すること、この要因が死後時間と関連することを解明し、臨床用CT装置をAiにも活用するためのガイドライン案を作成した。この成果は日本放射線技術学会総会などで発表しCyPos賞を受賞した。現在、論文執筆中である。
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