研究課題/領域番号 |
26670352
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
根東 義明 日本大学, 医学部, 教授 (00221250)
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研究分担者 |
森本 哲司 日本大学, 医学部, 助教 (10344657)
渋谷 昭子 日本大学, 医学部, 助手 (20611619)
近藤 克幸 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30282180)
高橋 昌里 日本大学, 医学部, 教授 (60328755)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 情動 / 思考過程 / 感情 / インシデント / 医療事故 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
初年度に引き続き、感情過程をどのように分類するのかについての検討を個々の研究者が進め、その成果を週1回の研究会議で打ち合わせた。医療における感情過程を分類整理した先行研究成果の報告を詳細に調査したが、ほとんど研究成果が報告されておらず、本研究の先進性と重要性が改めて明らかとなった。一方で、心理学分野をはじめとする様々な研究領域においては、感情過程の分類や各感情の相互関係に関する報告がみられることも明らかとなった。このため、これらを情報収集し、どのような感情分類を行って実際の研究に応用すべきかを詳細に検討した。 感情過程の分析に際して、思考過程のすべてのステップや外的要因などをすべて含めた網羅的分類を作成することが重要であるとの視点から、これまでのインシデント分析手法として重要視されているSHELモデルや4M(5M)-4Eモデルに沿って、独自のインシデント要因分類マップを完成させた。 この分類マップに基づいて、実際の医療インシデントおよび事故事例を分析すべく、医療機能評価機構の医療事故等情報収集事業の運用するデータベースより、小児科医師が起こしたと判断されるインシデント報告書を分析し、感情因子が関係すると思われる事例の抽出と、原因の分類・統計解析を開始した。 解析は現在進行形だが、この間の中間分析結果でもすでに、医療事故等情報収集事業で報告されている事例の発生要因の記述が、今回作成したインシデント要因分類マップから評価した場合に不十分ないし誤分類と指摘すべき内容になっている事例が少なくないことが明らかとなった。 このため、データベース事例の記述内容を、小児科医師2名、看護師1名、医療管理学研究者1名、医療情報学研究者1名、心理学研究者1名、医療関連事務職1名の分析チームで詳細に解析し、作成したマップに精密に分類表記する作業を展開している。最終年度にその成果を公表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予測していたよりもはるかに感情因子を分析し分類する作業は難しく、とくに適切な事例を抽出するためのデータソースを見出すことは困難だった。 今回、医療機能評価機構の事故等情報収集事業で公開されている医療事故・インシデント事例データが実際に利用可能かどうかを検証するために、予想よりもはるかに長時間の緻密な作業が必要であったため、進捗はやや遅れることとなった。 特に、研究の困難を要した要因として大きかったのはインシデント等事例から実際に要因の分類を行って発生要因マップを作成する段階だった。これまでの医療分野での感情因子に関する先行研究が一切存在しないことが明らかとなり、異なる研究分野における研究成果を引用しながら、本研究の成果に結び付けなければならなかったことが困難性を一段と大きくした。 また、モデル化に必要となる実事例として応用した医療機能評価機構の事例データベースでは、感情因子を明確に評価できるデータベースの構造化がなく、事例の記載にも簡略化傾向が強かった。記載自体が叙述的で構造化されていないため、分析に推論の占める比率が高かったことは、研究全体に時間的に大きな負荷を与えた。 しかし、職種のことなる研究者チームによる分析を行ったところ、感情因子の分析はかなり可能であることが明らかとなってきた。現在、遅れていた研究の進捗は改善の方向となっている。 今後、さらに努力を重ね、最終年度の研究成果の報告に結び付けるべく作業を進める。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、現在進めている医療機能評価機構事故等情報収集事業の事例分析をさらに推し進め、どのような感情因子が医師において医療インシデント・医療事故につながっていくのかを明確な形として明らかにしたいと考える。 初年度には困難を極めた感情因子の分析手法についても、2年度目のチーム分析の成果が徐々にはっきりとしてきたことから、最終年度にはその成果を取りまとめ、今後のインシデント・事故分析やそのレポート手法についての重要な結果報告・方法論への提言等が可能な段階に到達したと自己評価している。 したがって、今回の研究報告に合わせて、あるべきインシデント・事故のPDCAサイクル手法についても、今後の研究成果をもとに、重要な提言ができるものと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究において、会議費などの支出が少なかったことと、謝金等による調査活動が来年に持ち越しとなったため、その分の支出が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度であり、当該年度に実施し得なかった調査活動が本格化することから、この活動にかかる研究経費が当該年度の持ち越し分を含めて支出される見通しとなっている。 また、学会等発表についても最終年度であり、予定よりも多くの場での公表を目指したいことから、それにかかる支出が当初よりも増加することが予測されるため、これらの支出に充てたい。
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