研究実績の概要 |
本年度はSDラットを使用し、アルコール摂取・トレッドミルでの運動・2kgの水袋での圧迫と抑制を使用することで興奮性譫妄の症例にみられる状況を再現し、ストレス負荷によるmicroRNA発現の差を検討する実験を行った。このとき運動や圧迫などのストレス因子をそれぞれ20分の群と90分の群に分けることで、ストレス強度による違いも検討した。再現実験直後に採取した血清からtotal RNAを抽出し、これを東レ株式会社に依頼してマイクロアレイを行いmicroRNAの変動について網羅的検索を行った。その結果、複数のmicroRNAで発現量の変動がみとめられたため、特に変動の大きかった8種類のmicroRNAについて個別にreal-time PCRで発現量の変化を確認した。 Real-time PCRの結果から、アルコール摂取後のトレッドミル運動を20分行う群 とその後さらに圧迫を20分行う群では、血清中のmiR-199a発現量が4~9倍程度まで上昇することが分かった。同様にアルコール摂取後の90分間のトレッドミル運動や圧迫によって、血清中のmiR-1, -24a, -133a/bがそれぞれ30倍, 5倍, 18倍, 21倍以上の発現量増加がみとめられた。一方でmiR-208, -212, -296は発現量の有意な変化をみとめなかった。これらの結果から、身体的ストレスが特定のmicroRNA発現を変動させることおよびストレス負荷の程度によって変動するmicroRNAの種類とその変動の程度が異なることが分かり、これらはストレス負荷の指標となりうることが示された。また今回の血清に関する研究ではトレッドミルの運動群と運動後の水袋による圧迫群との間でmicroRNA発現に有意な差はみとめられなかった。
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