死亡前に薬物誘発性のけいれんを起こしたラットの死後髄液成分についてNMR計測値を行い、けいれんラットと対照ラットの髄液を識別できるかを検討した。【方法】9週齢SD雄ラットを、けいれん誘発群(ペンテトラゾール(PTZ)-70mg/mL)(n=13)、抗けいれん薬単独投与群(ペントバルビタール(PB)-90mg/mL) (n=13)、けいれん抑制群(PTZ+PB) (n=10)、対照群(生食水) (n=9)の4群に分け、各薬物を腹腔内投与した。投与後、各個体を肉眼的に行動観察すると共にビデオ撮影した。投与5分後に炭酸ガス暴露にて安楽死させ、直ちに髄液を採取し、7テスラFT-NMR装置(JEOL)にて、軽水シグナル抑制の条件でプロトン(1H NMR)測定を行った。得られたNMRデータを数値化し、Unscrambler X(CAMO)を用いて主成分分析等の解析を行った。【結果】主成分分析では、主成分1および主成分2のスコアプロット上で、対照群以外については、同じ群に属する個体のデータは群ごとにそれぞれ近い領域に分布し、特にけいれん誘発群とけいれん抑制群は、対極の位置に分布した。【考察】主成分分析のスコア値を用いて、薬物の投与や死亡前のけいれん発作の有無を識別できる可能性が示唆された。 現在、各群の検体すべてのNMR計測を完了し、その後の信号処理を行うと共に、データ解析手法のブラッシュアップを進めているところである。並行して、けいれん群のラットのPTZ投与後の行動変化については、行動スコアを用いて定量化し、エソグラムによる評価を行っている。髄液採取後に摘出した脳については、HE染色やKB染色標本を作製し、脳の病理組織変化の有無についても検索している。
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