研究課題/領域番号 |
26670369
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
平野 明美 愛知県立大学, 看護学部, 助教 (30438197)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アディポネクチン / 高感度CRP / ホモシステイン / 認知症 / 介護負担感 / 介入研究 / 動脈硬化 / 介護負担 |
研究実績の概要 |
認知症介護者は高血圧や虚血性心疾患を発症しやすく、免疫力の低下や死亡率が高い。その要因として介護に伴う精神的なストレスの関与が推察される。我々は、高齢の認知症介護者の介護負担感の重さと身体活動総量の低下、特に、スポーツ以外の身体活動に分類されている余暇活動(レジャー活動)が低下することを明らかにした。しかしながら、高齢の介護者で運動に制限があるような身体疾患や運動器疾患がある介護者は参加できなかった。そのため、音楽運動療法を行うことにより介護者の健康の維持・増進と介護負担感を軽減することができるかを検証する。生活の中に音楽運動療法を取り入れることにより筋肉の緊張や弛緩をリズミカルに繰り返すと循環器系・骨格筋に作用し心肺機能の増大、心臓・血管系の改善・筋力や平衡感覚の向上につながり動脈硬化の進行からの血管病変を予防できると期待し、社会医学的に寄与するところが大きいと考える。 平成26年度は倫理審査で承認後調査を開始した。平成27年度は介入群に割り当てられた介護者は介入内容について具体的に実施内容を伝えられ実施が開始された。対照群には介護生活のみを継続し、通常の生活を継続してもらう。主評価指標は介護負担感尺度(Zarit Burden Interview; ZBI)、副評価指標は血液生化学データのアディポネクチン、高感度CRP、ホモシステインなどである。音楽療法による介入試験により身体活動量を増加させ、音楽に合わせて身体を動かす音楽体操を無理しない程度にリズムに合わせて行ってもらった。これらの評価指標の介入前後の変化を追跡調査しデータ収集を終了した。平成28年度は、蓄積したデータを解析、介入群と対照群を比較、その効果を検証し評価した。介入群においてSF36の下位尺度である全体的健康感が有意に改善した。音楽運動療法が認知症介護者の健康増進に寄与することを検証することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、研究計画立案、研究実施施設への依頼、データ収集、データ解析、論文作成など研究にかかわる全般を一貫して行う。連携研究者らは、研究計画に学術的な示唆を与え、研究対象者を選択、医学的評価を行った。 倫理審査で承認を受けた後、連携研究者全員に本研究の概要を説明し協力を得た。研究への参加に関して、調査対象となる認知症介護者に、研究の目的、方法、参加することによって予測される利益と不利益、同意しなくても不利益を得ないこと、研究期間において、対象者の脱落が予測されるが、研究の継続は対象者の意思を尊重し、決して強制されるものではないこと、いつでも同意を撤回できること、匿名性、人権・プライバシーの保護について、十分に研究の内容を理解していただいたうえで十分にインフォームドコンセントを行った。 介入群に割り当てられた介護者は介入内容について具体的に実施内容を伝え実施した。対照群には介護生活のみを継続し、通常の生活を継続してもらった。主評価指標は、介護負担感尺度(Zarit Burden Interview; ZBI)、副評価指標は血液生化学データのアディポネクチン、高感度CRP、ホモシステインなどである。 研究開始時、3ヶ月後に、介護者、認知症患者について上記の調査項目に基づいて基本調査を行った。音楽療法による介入試験により身体活動量を増加させ、音楽に合わせて身体を動かす音楽体操を無理しない程度にリズムに合わせて行ってもらった。対象者の追跡・観察が順調に終了しており、データの解析ができ、論文作成に取り組める状態であるため、研究の目的の達成度としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
蓄積したデータを解析し、介入群と対照群を比較し、その効果を検証し評価した。研究結果の解析時には、音楽運動療法の介入により介護負担のストレスの軽減だけでなく、血液生化学データの改善がされているか、認知症介護者の健康状態の維持増進、血管疾患の予防、改善の一助になるような結果が得られているかなどを解析する。連携研究者らは、医学的評価、学術的に論文を評価するなど、論文に示唆を与えるように関わる。 介護者の身体、心理面における健康維持は介護者の生活の質(Quality of Life)の向上に寄与するのみでなく、被介護者への介護の質を向上することができるように研究成果をまとめる。 さらに、研究成果をより深めるために、以下について検討する。生活の中に音楽運動療法を取り入れることにより身体が揺らぎ、筋肉の緊張や弛緩をリズミカルに繰り返すと身体の精神が癒されると予測する。このことにより介護者の精神的なストレスが軽減され、循環器系に作用し心肺機能の増大、心臓・血管系の改善につながり動脈硬化の進行からの血管病変を予防できると期待する。また、骨格筋・筋力や平衡感覚の向上も期待できる。 今後、論文を作成、成果発表をする。研究成果を発表する際には、介護者の生活習慣の改善や精神衛生の向上により、認知症の在宅介護継続に寄与し、結果的に被介護者が少しでも長くご自宅で生活できるようになるとすればその意義はさらに深いこと、本研究において、何らかの活動制限があり高齢の慢性期疾患を持つ介護者、介護のために外出が困難な在宅介護者のための介護負担感の軽減に寄与するプログラムを開発することができれば、社会医学的に寄与するところが大きいことなどを本研究の意義として強調する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データの解析中であったため未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
論文作成、論文翻訳、学会での情報収集・発表と論文投稿等に使用する予定である。
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