認知症患者の介護者は、認知症の症状により精神的な負担が大きい。また、認知症患者の介護者は高血圧や虚血性心疾患を発症しやすいこと、免疫力が低下しやすいことや介護者の死亡率が高いことも報告されている。血管病変の高率な発症については様々な要因が考えられるが、その機序の1つとして、認知症介護者では非介護者よりも血液凝固能が高いという報告があり、その要因として介護に伴う精神的なストレスの関与が推察される。 本研究は、認知症介護者を対象に音楽運動療法を取り入れた活動プログラムの介入により介護負担のストレスの軽減だけでなく、自宅で行うことによりアディポネクチン、ホモシステイン、高感度CRPなどの動脈硬化促進因子に関する生化学データの改善が改善できるのかを検証する。 対象は外来通院中のアルツハイマー型認知症患者と65歳以上の高齢介護者であり、ランダムに介入群と対照群に分け、介入群には音楽運動療法を取り入れた活動プログラム(20分/2回/週)を行い、対照群は通常の介護のみを行った。研究への参加の自由などの倫理的な配慮を行った。 対象者は42人、介入群とコントロールでアディポネクチンとホモシステインは有意に改善した。しかしながら、高感度CRPと BMIの有意な変化がなかった。ZBIは介入群では有意差がなかったが、コントロールでは有意に悪化した。GDSは介入群では有意に改善し、コントロールでは変化がなかった。 介入群においては運動の効果があり、アディポネクチンの低下とうつの重症度が関連するという報告から、コントロールにおいては身体活動量総量が増えていないにも関わらず変化があったことから心理的な影響であると考える。本研究の身体活動量は高齢者が継続しやすい活動量を設定したため、BMIの有意な低下が起こらないためサイトカインの低下が起らず、高感度CRPが低下しなかったと考えられる。
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