漢方薬の服用により、皮疹や痒み、さらには間質性肺炎や肝障害の発症も報告されており、漢方薬成分に対するアレルギーが想定されている。本研究では、副作用報告のある漢方薬の主要な成分の中でも各種フラボノイド化合物に着目し、カンゾウのリクイリチン、オウゴンのバイカリン、チンピのヘスペリジンに対する特異的なモノクローナル抗体を作製し、これらの抗体を用いた超高感度なイースタンブロット法の開発に成功してきた。 また研究当初に文献情報から生薬サイコに含まれるフラボノイド配糖体のナルシシンに着目し、モノクローナル抗体の作製に取り組んできた。マウス体内でのナルシシンに対する抗体誘導を確認出来たが、研究期間内でのモノクローナル抗体作製には達することが出来ず、現在も引き続き取り組んでいる状況である。 さらに、間質性肺炎等の副作用報告のある漢方薬に配合される生薬のテルペノイド化合物に着目し、サイコのサイコサポニンaおよびシャクヤクのペオニフロリンに対するモノクローナル抗体を用いた高感度な検出を可能とするイースタンブロット法を化学発光法を用いて開発することに成功した。化学発光量とテルペノイド化合物量との間で良好な相関のある検量線が作成できたことにより、本法がELISA法やHPLC法と同様に定量分析できることが示唆され、副作用が発症する際の血中濃度や尿中の排泄量を簡便に測定できる手法を確立できた。 さらに最終年度はダイオウ配合漢方薬の副作用である便秘症以外の者の下痢や便秘症でダイオウ配合漢方薬を服用している母親からの授乳による乳児の下痢に関して、その原因物質であるセンノシドA、Bについて抗センノシドA、Bモノクローナル抗体を用いたイースタンブロット法およびELISA法によるダイオウ配合医薬品の分析を実施した。1錠または1包当りのセンノシドA、Bの含有量から下痢等の副作用を未然に防ぐ可能性が示唆された。
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