研究課題
マイクロキャビティアレイ液体生検技術を用いて、肝細胞がん(肝がん)循環腫瘍細胞(CTC : circulating tumor cells)を特異的に検出する手法を確立し、治療後の患者を対象とした臨床研究において再発リスク診断法を開発する目的で、CTC検出系の確立にはin vitroおよびin vivo実験系を活用した。(1)肝がんCTC検出系の確立: 肝がん患者の末梢血液中を循環しているCTCを検出する実験系を確立するために、マイクロキャビティアレイの感度・特異性について検討した。(a)血球の通過性:全血液の通過性は角丸長方形;短辺8μmの基板が目詰まりをせず最も効率的に白血球を捕捉した。(b)肝がん細胞株(in vitro)を用いた検出系の確立:ヒト肝がん由来培養細胞株HepG2と全血液を混合することによって、(a)と同様に通過性、腫瘍細胞の検出率を検討した。白血球はPE標識CD45抗体、肝がん細胞はFITC標識AFP抗体によって染色し、共焦点レーザースキャン顕微鏡にて確認した。その結果、肝がん細胞の特異的な検出率(回収率)は約70%であった。さらに、肝がん細胞の定量性に関しては、腫瘍マーカーAFP遺伝子の発現量(mRNA)をnested real-time RT-PCR技術を用いる手法を確立した。(2)肝がん患者からのCTC検出;臨床研究: (1)で確立した検出系を用いて、進行肝がん患者(Stage IVA以上)の末梢血液中を循環しているCTCを特異的に検出することに成功している。
2: おおむね順調に進展している
本研究において、平成26年度は(1)(2)が計画されていた。(1)および(2)について検討中ではあるが順調に進行している。(1)における詳細な細胞免疫学的検討に時間を要していることから、(2)への進展がやや遅延しているものの、おおむね順調に進行しているものと考えられる。
当初の計画通り、今後はこれまでの(1)(2)に加えて以下の研究を予定している。(2)肝がん患者からのCTC検出;臨床研究(1)で確立した検出系を用いて、肝がん患者の末梢血液中を循環しているCTCを定量して、治療効果判定における有用性を検討する。実施に際しては、本学医学部倫理審査委員会の承認を得て行う。(a) 肝がん局所治療におけるCTC定量(20例): 早期の肝がん患者に対して広く行われている内科的局所治療(ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓術)に際して、治療前および治療後(4時間、24時間、1週間、1ヵ月)におけるCTCを定量する。治療後3ヵ月ごとの再発率(~2年間;肝内、遠隔臓器)を画像検査(超音波、CT、MRI)で評価する。(b) 肝がん化学療法におけるCTC定量(20例): 他臓器転移を認めない肝がん患者に対して広く行われている肝動注化学療法に際して、治療前および治療後(24時間、1週間、1ヵ月)におけるCTCを定量する。画像検査によって治療後の無増悪期間(TTP: time to progression)を評価する。(3)肝がんCTCの分子生物学的解析(a) 免疫細胞学的検討、(b) ゲノム生物学的検討:(b-1) 発現解析 (b-2) ゲノム塩基配列解析;(i) ゲノムDNA抽出、(ii) ライブラリー作成・ターゲット領域濃縮、(iii) 高速シーケンス、(iv) 点突然変異や挿入欠失(indels)の確認、(v) データ解析
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件)
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