研究課題
マイクロキャビティアレイ液体生検技術を用いて、肝細胞がん(肝がん)循環腫瘍細胞(CTC : circulating tumor cells)を特異的に検出する手法を確立し、治療後の患者を対象とした再発リスク診断法を開発した。CTC検出系の確立にはin vitroおよびin vivo実験系を活用した。(1)肝がんCTC検出系の確立: 肝がん患者の末梢血液中を循環しているCTCを検出する実験系を確立するために、マイクロキャビティアレイの感度・特異性について検討した。(a)血球の通過性、(b)肝がん細胞株HepG2、PLC/PRF/5、Huh7等(in vitro)を用いた検出系の確立において、肝がん細胞の特異的な検出率(回収率)は約70%であった。さらに、肝がん細胞の定量性に関しては、腫瘍マーカーAFP遺伝子の発現量(mRNA)をnested real-time RT-PCR技術にて確認した。(2)肝がん患者からのCTC検出;臨床研究: (1)で確立した検出系を用いて、肝癌患者18例、肝硬変患者(非担癌患者)10例、健常人7例の全血3mLより検出した。肝癌患者において89%(16/18)でCTCを検出した(平均68.6個)。進行度別ではStageⅠ-Ⅲで7.1個、StageⅣで128.3個であり、進行と共にCTC数は増加傾向を示すことが分かった(p<0.05)。
2: おおむね順調に進展している
本研究において、平成27年度は(1)(2)が計画されていた。(1)および(2)について検討中ではあるが順調に進行している。(1)における詳細な細胞免疫学的検討に時間を要していることから、(2)への進展がやや遅延しているものの、おおむね順調に進行しているものと考えられる。
当初の計画通り、今後は(2)および(3)の研究を予定している。(2)肝がん患者からのCTC検出;臨床研究(1)で確立した検出系を用いて、肝がん患者の末梢血液中を循環しているCTCを定量して、治療効果判定における有用性を検討する。実施に際しては、本学医学系研究倫理審査委員会の承認を得て行う。(a) 肝がん局所治療におけるCTC定量(20例): 早期の肝がん患者に対して広く行われている内科的局所治療(ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓術)に際して、治療前および治療後(4時間、24時間、1週間、1ヵ月)におけるCTCを定量する。治療後3ヵ月ごとの再発率(~2年間;肝内、遠隔臓器)を画像検査(超音波、CT、MRI)で評価する。(b) 肝がん化学療法におけるCTC定量(20例): 他臓器転移を認めない肝がん患者に対して広く行われている肝動注化学療法に際して、治療前および治療後(24時間、1週間、1ヵ月)におけるCTCを定量する。画像検査によって治療後の無増悪期間(TTP: time to progression)を評価する。(3)肝がんCTCの分子生物学的解析(a) 免疫細胞学的検討、(b) ゲノム生物学的検討:(b-1) 発現解析 (b-2) ゲノム塩基配列解析;(i) ゲノムDNA抽出、(ii) ライブラリー作成・ターゲット領域濃縮、(iii) 高速シーケンス、(iv) 点突然変異や挿入欠失(indels)の確認、(v) データ解析
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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