研究課題
肝細胞特異的に変異型KrasG12D蛋白を発現し、Ras経路が恒常的に活性化したマウス(K-RasLSL-G12D/+AlbCre:L-KrasG12Dマウス)を作成すると、9ヶ月齢で全個体に肝腫瘍を認め、腫瘍部では野生型マウスの非腫瘍部に比しCTGFの発現上昇を認めた。Kras野生型であるHuh7細胞においてEGFを添加しRasを刺激すると、CTGFの発現上昇を認めた。一方Kras変異型であるHepG2細胞においてsiRNAによりKras発現を抑制すると、CTGFの発現低下を認めた。またMek/Erkの阻害剤によってもCTGFの発現が低下した。NCIより公開されている肝癌症例225例の腫瘍部のmicroarray dataを用いたssGSEA解析においても、CTGFの発現レベルはRas/Raf/Mek/Erk経路の活性化レベルと有意な正の相関を認めた。そこでマウスモデルを用いてHCCにおけるCTGFの意義について検討した。L-KrasG12Dマウスにおいて肝細胞特異的にCTGFを欠損したマウス(L-KrasG12D CTGFΔ/Δマウス)を作成すると、L-KrasG12D CTGF+/+マウスに比し腫瘍個数、肝重量体重比は有意に低下し、肉眼的腫瘍形成率、最大腫瘍径も低下傾向を認めた。腫瘍の組織型は肉腫様肝癌の割合が減少し、dysplastic noduleの割合が増加した。以上よりRas経路の恒常的活性化により肝発癌が惹起され、CTGFが肝癌の進展を促進する分子であることが示唆された。CTGFを標的とした新規治療が有効である可能性もあると考えられ、意義の大きい成果である。
2: おおむね順調に進展している
Ras経路活性化による発癌過程において、CTGFの上昇が重要であることを明らかにした。またRasの活性化によってCTGFは上昇することも明らかとなった。CTGFを標的とした新規治療の可能性も見えてきており、本申請課題はおおむね順調に進展していると考える。
平成26年度の結果をもとに、ヒトHCC臨床検体を用いて腫瘍部でのCTGFの発現上昇が認められるか、CTGF発現レベルと組織型などに相関がないかを検討する。また肝腫瘍だけでなく、膵発癌モデルマウスを用いた検討や、間質細胞におけるCTGF発現とその意義についても検討する。肝腫瘍モデルにおいてCTGFの中和抗体を用いた治療実験も検討する。
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