研究課題
肝発癌モデルマウスとして肝細胞特異的変異型KrasG12D蛋白発現マウス(L-KrasG12Dマウス)を作成したところ、10ヶ月齢で全個体に肝発癌を認め、腫瘍部でCTGFの発現上昇を認めた。In vitroの検討においてKras野生型肝癌細胞株に対してEGFを添加しRasを刺激するとCTGFの発現上昇を認めた。一方、Kras変異型肝癌細胞株においてsiRNAによりKras発現を抑制するとCTGFの発現低下を認め、Mek/Erkの阻害剤によっても発現低下を認めた。以上の結果から、Ras/Mek/Erk経路の活性化によりCTGFが誘導されていることが示唆された。次にマウスモデルを用いてHCCにおけるCTGFの意義について検討した。肝細胞特異的にCTGFを欠損したL-KrasG12Dマウスを作成すると、L-KrasG12D CTGF+/+マウスに比し腫瘍径、腫瘍個数、肝重量体重比は有意に低下し、形成された腫瘍も組織学的分化度の改善を認めた。これらの結果から、CTGFは肝癌の進展を促進する分子であることが示唆された。またHCC切除例92例を対象とした臨床検体においても、腫瘍部では非腫瘍部に比しCTGFの有意な発現上昇を認め、CTGFを高発現するHCCはPIVKA-II、門脈浸潤陽性率、予後不良の肉眼型の割合が高値であり、高悪性度であることが示唆された。最後にCTGFによる肝癌進展促進機序について検討した。肝癌細胞株に対してCTGFを強制発現してもcell viabilityに変化は認めなかったが、肝星細胞株との共培養下ではcell viabilityの上昇を認めた。またCTGF強制発現肝癌細胞株を用いたxenograftモデルでは、強制発現株単独ではコントロール細胞に比し腫瘍体積に差を認めなかったが、肝星細胞株と混合すると腫瘍体積は有意に増加した。以上の結果から、CTGFは肝癌細胞と肝星細胞の相互作用に関与することで肝癌の進展を促進することが示唆された。以上の検討によりCTGFの肝癌進展促進作用およびその機序が明らかとなり、CTGFを標的とした新規治療の有効性が示唆された。
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