研究実績の概要 |
本研究において、まずは分化誘導方法の改良から着手した。内胚葉分化誘導時にDimethyl sulfoxide(DMSO)を添加する方法により、アクチビンの濃度を従来の100ng/mlより、6.25ng/mlまで低くすることが出来ることを見出した。DMSOによるアクチビンの分化促進の分子機序について詳細に調べた結果、DMSOは、アクチビンの閾値の濃度を低下させる作用があることが分かった。DMSO存在下では、低い濃度のアクチビンにおいて、その下流のSmad2のリン酸化を引き起こすことが出来る。さらに、DMSO存在下では、アクチビンによって分化誘導された細胞がM期からG1期へと向かわせることが出来、その結果より分化傾向にさせることが出来ると考えられる。DMSOをアクチビンによる内胚葉分化時に加える方法を取り入れることで、コストの低減のみでなく、腸への分化誘導の時間短縮にも繋がった(Ogaki S et al., Scientific Reports., 2015)。さらに、ある種の細胞外基質を使うことにより、セルソータを使わずに腸前駆細胞を純化できることを見出した(Otera et al, unpublished)。また、得られた細胞について、成長増殖因子を検討した結果、試験管内において、腸前駆細胞を増幅できる方法を見出した。さらに、化合物を添加することによる成熟化を図ることが出来るようになった。これらの方法を組み合わせることにより、成熟度の高い細胞をある程度たくさん得られるようになり、移植する細胞源が確保できるようになった。
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