研究課題
AIM(Apoptosis inhibitor of Macrophage)は、マクロファージのアポトーシスを抑制する分子であるが、脂肪酸合成酵素の機能を抑制し、脂肪滴を融解し、脂肪前駆細胞の成熟を妨げる作用もある。一方、我々は、肝疾患患者の血清プロテオミクスで、AIM が高発現している事を新規に見出し、血清AIM濃度が肝線維化の程度と相関することを明らかにしている。非アルコール性脂肪肝炎やC型慢性肝炎の病態進展には、アポトーシスや肝脂肪化などが関与し、肝線維化は肝発癌と密接に関連することから、本研究では慢性肝疾患におけるAIM の臨床的意義を解明することを目的とした。マクロファージ特異的にAIMを発現させるために、CD11bプロモーターの制御下にAIM-cDNAが発現するトランスジェニック(TG)マウスを作成した。このAIM-TGマウスに、コリン欠乏アミノ酸置換食(CDAA)及び高脂肪食を投与して脂肪肝を誘導し、AIMが脂肪肝や肝線維化にどのように影響するかを検討した。CDAA食を16週間投与すると、野生型(WT)マウスと比較してAIM-TGマウスでは、sirius-red染色、AZAN染色、肝組織中のハイドロキシプロリン含量で評価した肝線維化は有意に亢進していた。また、WTマウスと比較してTGマウス肝ではα-SMA陽性の活性化肝星細胞数は有意に増加し、肝組織中のマクロファージ浸潤も認めた。以上のことから、マクロファージから産生・分泌されるAIMは、慢性肝疾患の肝線維化マーカー候補であるだけではなく、脂肪肝における肝線維化に促進的に作用する可能性が示唆された。現在、高脂肪食を24週、48週、60週間投与するモデルなどを作製中であり、CDAA食以外の脂肪肝モデルでの検討、およびAIMと肝発癌との関連を今後検討する予定である。
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Oncol Rep
巻: 33 ページ: 1657-66
10.3892/or.2015.3745.