研究課題
本研究課題では、微小流体デバイス上で長期灌流可能な血管網を構築する基盤技術を開発する。さらに、そのシステムを用いてより生体内の状態を模した血管新生現象を再現し、1)その分子細胞メカニズムの包括的理解、また、2)動脈分化等の血管成熟過程を理解することを目標としている。平成26年度においては、上記目標を達成するための基盤技術の確立を行った。これまでに、ヒト培養血管内皮細胞をヒト肺線維芽細胞と供培養することで、血管新生を通してデバイス上に管腔構造を持つ血管網を構築することができた。特に、細胞外基質と培地の条件を整えることで、目的にそった血管網を効率よく再構築する条件を確定させることができた。また、ヒト培養周皮細胞を内皮細胞とあわせて導入することにより、血管内皮細胞による血管構造の周りに周皮細胞がとりまく生体内をより模した血管網を再現することが可能となった。このことから、血管内皮細胞からなる血管網構造をより長期に持続さするためには周皮細胞の存在が重要であることがわかってきた。また、あらかじめ内皮細胞の細胞質を2色以上の色素で色分けし、それらの細胞を用いて上述の実験を行うことで(モザイク解析)、血管新生を行う際の一細胞動態を捉えることが可能となってきた。さらに、同時に、マウス大動脈から内皮細胞を酵素処理により粗単離し、培養増幅後、磁気分離装置を用いてCD31陽性細胞へと純化することが可能となってきた。これまでに、粗単離した内皮細胞を用いて、前述と同様、微小流体デバイス上で管腔構造をもつ血管網を再構築できることを確認している。以上の様に、次年度の研究に必要な基盤技術は確立できてきている。
2: おおむね順調に進展している
今年度の大きな目標であった、ヒト培養細胞を用いた微小流体デバイス上での灌流可能な血管網の構築技術、並びにマウス大動脈組織から機能性を保持した質の良い血管構成細胞の単離(特に血管内皮細胞)技術の確立がほぼできたので、おおむね順調に進展していると自己評価した。
平成27年度においては、微小流体デバイス上に作製した血管網を長期維持するための一つのキーテクノロジーであるマイクロ流体デバイス上の灌流技術の確立に注力する。それにより、血管網の長期維持のみならず、血管内腔の灌流による剪断応力や垂直抗力が血管形成過程、リモデリングおよび血管形態保持過程にどのような影響を及ぼしているかを検討する。
物品費および旅費使用にて小額の端数が生じた。
次年度の計上予算にあわせて、物品費として使用する計画である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
Nat Commun
巻: 29(5) ページ: 4552-4565
doi: 10.1038/ncomms5552
細胞工学
巻: 33(6) ページ: 639-644
http://ircms.kumamoto-u.ac.jp/research/archives/6