心不全の診断で入院している患者22人(男性18人、女性4人)から書面を用いて十分に説明して承諾を得たうえで、便検体の提供を受けた。年齢は平均59.4歳、心不全の重症度はNew York Heart Association分類でII~IV度(平均2.7度)、胸部X線での心胸郭比は平均62.0%、心エコーでの左室拡張末期径は平均65.0 mm、左室収縮率は平均32.0 %、BNP値は平均895.6 pg/mLであった。便検体から細菌叢ゲノムDNAを抽出して、16S rRNA領域を増幅したPCR産物(16Sアンプリコン)を対象として配列解析を行っている。クオリティチェックの後にプライマー配列のトリミングを行い、クラスタリングの後に菌種(OTU)組成の解析を行う。一部の検体については、OUT数から菌種数の推定、系統樹組成から細菌叢全体構造の比較(UniFrac-朱座標、距離解析)まで行った。その結果、心不全患者と健常者との間で、OUTの数に有意差は見られなかったが(P=0.24)、細菌叢の組成が門レベルだけでなく属レベルで異なることが示唆された。心不全における血行動態の異常が腸内細菌叢の構成異常を引き起こし、そのことが心不全をさらに進展させるという「心腸連関」という新しい概念の妥当性を指示する実験結果であり、今後さらに解析数を増やして解析を行うとともに、メタゲノムデータの解析へと進み、菌種特定や菌種蘇生解析、さらにメタボローム解析を組み合わせた遺伝子機能解析や代謝系解析を行っていく。
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