研究課題
神経堤細胞はニューロンやグリア細胞からメラノサイト、頭部の骨軟骨細胞に至るまで多彩な分化能をもつ幹細胞群である。心大血管系においても後耳胞領域の心臓神経堤細胞と呼ばれる細胞群が大血管の平滑筋や隔壁形成に寄与し、その発生異常は総動脈幹や大血管転位などの病態に関与する。最近我々は、心臓神経堤細胞よりも頭側にあり、第1,2鰓弓に遊走して頭部骨格の形成に中心的役割を果たす頭部神経堤細胞が心臓内にも流入し、一部は冠動脈近位部の平滑筋細胞に分化することを見出した。本研究においてはさらに、この心臓内に流入する神経堤細胞についてニワトリ胚とマウス胚を用いて研究を進めた。ニワトリ胚における蛍光ラベルとWnt1-Creマウスによる神経堤細胞の追跡により、前耳胞神経堤細胞は後耳胞神経堤細胞(心臓神経堤細胞)に先んじて心流出路内を遊走し、心基部に集簇しながら冠動脈平滑筋の他に半月弁、乳頭筋、心外膜などに分布することが明らかになった。Wnt1-Cre; ROSA-EYFPマウスによるソーティングとFluidigm C1による単一細胞遺伝子解析により、心臓内に流入する神経堤細胞は血管平滑筋の他に特徴的な遺伝子発現パターンを示す亜群に分けられ、そのうちの一部はc-Kitなどの幹細胞マーカーを発現することが明らかになった。このc-Kitなどを発現する一群は神経堤細胞がもつ多分化能と可塑性を保持している可能性があり、従来報告されている心臓幹細胞との関連や病態生理的役割の解明が今後の課題と考えられた。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 6件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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