研究課題/領域番号 |
26670403
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小田 哲郎 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (40569290)
|
研究分担者 |
山本 健 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50363122)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 酸化ストレス / リアノジン受容体 / カルモジュリン / ダントロレン |
研究実績の概要 |
本研究の目的としては、酸化ストレスがリアノジン受容体内のN末端-centralドメイン間の構造連関(zipping-unzipping)に及ぼす影響、さらにはRyR2安定化作用のあるFKBP12.6、カルモジュリン(CaM)などのRyR2結合タンパク、さらにはRyR2スタビライザーであるダントロレンとの関わりを実際に生きている心筋細胞で観察することである。これにより酸化ストレスによる心機能低下の機序を細胞内Caハンドリングの観点より詳細に解明し、全く新しいRyR2安定化薬の開発をめざす。細胞内の酸化ストレス発生に過酸化水素水(H2O2)を使用した。これまでの研究成果は、単離心筋細胞へのH2O2投与はFKBP12.6のRyR2への結合親和性に影響を与えなかったが、CaMの結合親和性は有意に低下した。ダントロレンはこのCaMの結合親和性を高め、RyR2の安定化に寄与していた。また蛍光標識したDPc10(F-DPc10)を用いて、酸化ストレスとドメイン連関の関係について検討した。F-DPc10のRyR2への結合速度とドメイン連関障害の程度は相関しており、本研究でもその手法を用いた。本研究ではさらに、厳密にRyR2に特異的に結合したF-DPc10の結合速度を測定する目的でF-FKBP12.6(RyR2に特異的に結合)とF-DPc10間のFRETを用いた。H2O2存在下ではF-DPc10の結合速度(τwash-in)は有意に速くなり、ダントロレンを添加した細胞では、F-DPc10の結合速度は遅くなった。すなわち、H2O2投与(酸化ストレス)によって、ドメイン連関が障害され、ダントロレンはこのドメイン連関障害を是正することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋細胞を用いて、酸化ストレスがリアノジン受容体の機能に与える影響について、Caスパーク、Ca waveを測定することで評価した。また酸化ストレスがリアノジン受容体の安定化に寄与しているとされる、FKBP12.6,カルモジュリンのリアノジン受容体への結合親和性に与える影響について蛍光標識したFKBP12.6(F-FKBP12.6)、カルモジュリン(F-CaM) を用いて検討した。さらに酸化ストレスとリアノジン受容体の構造変化(リアノジン受容体内のドメイン連関障害)との関係を蛍光標識したDomain peptide (F-DPc10)を用いて検討した。さらにより詳細に、より正確に評価するために、F-FKBP12.6とF-DPc10とのFRETを用いて評価した。すでに論文は完成しており、2015年3月末に投稿済みである。また4月28日にリバイスがあり、ほぼアクセプトの状態であった。今後は1ヶ月以内にreviewersへの返答を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はリアノジン受容体から乖離したカルモジュリンの細胞内での分布を調べることにより、心不全あるいは心肥大のシグナルにどのように関わっているかを心筋細胞の免疫染色やwestern blotの技術を用いて検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の心筋細胞を用いた実験において、細胞培養のための、培養シャーレ、血清の購入費を計上していたが、研究が順調に進んだことにより、予定より低額に抑えられたため、未使用額が生じた
|
次年度使用額の使用計画 |
この未使用額については平成27年度に計上した物品費(消耗品)、カルシウム蛍光指示薬やカルモジュリンやGRK5などの一次抗体の購入費と併せて使用する。
|