研究課題
本研究は酸化ストレスがリアノジン受容体(RyR)の構造変化(N-末端とセントラルドメイン間の連関障害)に与える影響、さらには、RyRの安定化に寄与しているRyR結合タンパクであるカルモジュリン(CaM)やFKBP12.6のRyRに対する親和性の変化を、単離心筋細胞を用いてより生体に近い形で測定した。まず、酸化ストレスを心筋細胞に与えることで、RyRからの異常なカルシウムリークが生じ、RyRの構造安定化作用を有するダントロレンを添加することにより、この異常なカルシウムリークが抑制された。さらに致死的不整脈の発生の元となるカルシウムwaveも酸化ストレスで発生するが、ダントロレンはこのカルシウムwaveも抑制することが実証された。また、心筋細胞内の酸化ストレスの程度を酸化ストレスのマーカーであるH2DCFDAを用いて測定したが、細胞内の酸化ストレスレベルはダントロレンを添加しても変化がなかった。よって、ダントロレンは細胞内の酸化ストレスレベルに影響を与えることなく、異常なカルシウムリークを抑制することが証明された。また酸化ストレスはCaMのRyRに対する親和性を低下させたがダントロレンはCaMのRyRに対する親和性を高めることが証明された。しかし、FKBP12.6のRyRに対する結合親和性には酸化ストレスは関与していなかった。さらに酸化ストレスはドメイン連関障害を惹起することが心筋細胞にて証明され、ダントロレンはこのドメイン連関障害を是正することで、RyRの安定化に寄与していることが証明された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Journal of Molecular and Cellular Cardiology
巻: 85 ページ: 240-248