研究実績の概要 |
1). PTRF/Cavin-1による心機能の制御機構の検討 ① PTRF/Cavin-1ノックアウト(KO)マウスの心臓ではwild-type (WT)マウスと比べ蛋白レベルでCav1, Cav3, SDPR/Cavin-2, SRBC/Cavin-3, MURC/Cavin-4が減少していた。② PTRF/Cavin-1 KOマウスの心臓ではWTマウスと比べERKの活性化、心筋細胞の肥大と線維化の増加、心収縮能の低下も認めた。③ Cav3 KOマウスでは心筋細胞におけるカベオラの減少とERKの活性化、心肥大を伴う心機能低下が報告されていることから、PTRF/Cavin-1 KOマウスの表現型が、Cav3蛋白の減少に起因している可能性が示唆された。 2). MURC/Cavin-4による心肥大・心不全の制御機構の検討 ① MURC/Cavin-4のcoiled-coil domainを欠失させたMURC/Cavin-4の変異体(ΔCC)を作成し、coiled-coil domainの機能を検討した。心筋細胞で全長MURC/Cavin-4は細胞膜に局在するが、ΔCCは細胞膜ではなく細胞質に存在し、coiled-coil domainはMURC/Cavin-4が細胞膜に局在するために必須であることが明らかになった。② ΔCCとCav3の結合能はΔCCでも保たれていた。そして、ΔCCを発現させた心筋細胞の細胞膜分画でCav3の蛋白レベルが減少していた。しかしΔCCは心筋細胞のCav3のmRNA発現には影響していなかった。これらのことからΔCCは心筋細胞でCav3と結合し、膜への局在を障害し蛋白発現を減少させると考えられた。すなわちMURCのcoiled-coilドメインはCav3の膜への輸送と安定化に必要と考えられた。③ΔCCを心臓に発現させたトランスジェニック(ΔCC-Tg)マウスの心臓では野生型(NTg)マウスに比べ、Cav3蛋白の減少とERKの活性化、心肥大を伴う心機能低下を認めた。④ これらの結果からMURC/cavin-4のcoiled-coilドメインは細胞膜への輸送に必須で、Cav3が細胞膜で安定して存在するために重要な役割を果たしており、MURC/cavin-4は重要なカベオラ局在蛋白として心機能を制御していることが示された。
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