研究課題
慢性心不全の予後は悪性腫瘍と同等に悪く、重症慢性心不全の根治療法は心臓移植のみである。心臓移植にかわる治療として再生医療が注目されているが、克服すべき課題も多い。iPS細胞の出現により再生心筋細胞の細胞源は確保され、現在残されている最も大きな課題は、最適な細胞移植法の開発である。レシピエントの心臓への長期の生着と機能の回復を実現するためには血管構築を備え、心筋細胞の配向性を伴った心筋組織の移植が必要と考えられている。一方で3Dバイオプリンターを用いた3次元の生体組織が注目されている。この3DバイオプリンターによりヒトiPS細胞由来の心筋細胞と血管細胞を用いて心筋組織を再構築し、微小血管構造を持った再生心筋組織を作製することで重症慢性心不全へのiPS細胞を用いた再生医療を促進させることを目的として研究を行った。まず初年度は無糖乳酸培地により純化精製したヒトiPS由来心筋細胞およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をPDMSモールドを鋳型に充填し微小血管網を有する心筋球を作製できるかを検討した。その結果、PDMSモールドを用いることにより心筋細胞と内皮細胞から成る三次元小組織が構築可能であることが明らかとなった。なお、3Dプリンターを用いた細胞の打ち出しは不成功であったため、今年度再度条件の検討を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
3Dプリンターによる細胞の打ち出しは不成功であったものの、第一段階であった鋳型へヒトiPS心筋細胞および内皮細胞を充填し、組織構築に関しては成功している点で順調であると考えている。
3Dプリンターを用いた細胞の打ち出しは不成功であったため、今年度は細胞の打ち出しにおける条件の検討を再度行っていく予定である。また鋳型のPDMSに関しても3Dプリンターを用いたゲル構造物の作製によって代用することにより、より安定した心筋組織構築を目指す。
平成26年度は3Dプリンターを用いた細胞の打ち出しが困難であったこともあり、PDMSモールドを鋳型とした心筋組織構築を行った。iPS心筋を初めから使用せず、ラットの初代培養心筋を用いて条件検討を行ったため、予想に比べて費用がかからなかった。
今年度以降はヒトiPS由来心筋細胞を使用する点、および3Dプリンターを用いたゲル構造物の作製や細胞の打ち出しを行っていくことにより多くの費用がかかることが予想されます。
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Stem Cells Translational Medicine
巻: 3 ページ: 1473-83
doi: 10.5966/sctm.2014-0072.