研究課題/領域番号 |
26670413
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
白井 幹康 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (70162758)
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研究分担者 |
土持 裕胤 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (60379948)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 循環器・高血圧 / 交感神経活動 / 心臓血管中枢 / 微小循環 |
研究実績の概要 |
26年度は、ラットの腎交感神経活動を無麻酔・覚醒下で1か月間慢性記録することで、高血圧発生過程において血圧上昇と腎交感神経活動が比例関係にあるかどうかを、3つの異なる高血圧モデルラットを用いて検証した。具体的には、①高血圧発症前の4週齢高血圧自然発症ラット(SHR)に神経活動計測用の電極を埋め込んだ後、高血圧が進行する1か月間、血圧と腎交感神経活動を連続記録した(対照は正常Wistarラットとした)。②Dahl食塩感受性ラットに同様の神経活動記録用電極を埋め込んだ後、食塩負荷を1か月続け、血圧上昇と交感神経活動の変化の関係を計測した(対照はDahl食塩抵抗性ラットとした)。さらに、③2-kidney, one-clip(2K1C)高血圧ラットにおいても右腎動脈クリップ後1ヶ月間同様の関係を計測した(対照は正常Wistarとした)。 その結果、予想外に、どの高血圧モデルにおいても、高血圧発生過程で腎臓交感神経活動の並行した増大を認めなかった。神経活動の計測技術の問題かどうかを確認するため、急性低酸素負荷を加えてみたが、どのモデルでも腎臓交感神経活動の増大が観察できた。また、腎臓以外で腰部交感神経活動の慢性記録を同時に行ってみたが、この神経活動でも昇圧に並行した増加は起こらなかった。 これらの結果を踏まえ、27年度の実験計画を再考する予定である。即ち、まず、高血圧発症で交感神経活動亢進が本当に重要な役割を果たすのかを検証したい。そのために、異なる高血圧発症モデルを用いて、腎および腰部交感神経活動の変化を観察したい。その上で、交感神経活動増大と延髄循環中枢微小循環異常に因果関係があるかどうかを調べたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、高血圧発症に交感神経活動の亢進が関わるという仮定で実験計画を立てた。本仮定は近年では一般常識とされており、26年度の実験結果は想定外であったため、この仮定の実証に予定以上の多くの時間を費やし、延髄微小循環異常の検証実験に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
高血圧の発症に交感神経活動の亢進が関与することは一般常識になっている。しかし、26年度の研究からは、高血圧発症過程での腎臓交感神経活動および腰部交感神経活動の亢進は検証できなかった。この結果は、これまでの常識を覆すもので、さらなる検証実験が必要と考える。そこで、26年度とは異なる高血圧発症モデルを用いて交感神経活動の変化を調べる。さらに、血中カテコラミンを計測して生体全体の交感神経活動の活性化状況を把握する。 延髄の微小循環異常については、すでに高血圧自然発症ラットで捉えているが、そのメカニズムを調べ、微小循環異常と高血圧の程度との相関関係について調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、研究費を主に物品費に使う予定であったが、想定以上の慢性実験で労力が必要となったため、研究員の雇用に使った。27年度も引き続き研究員雇用のための人件費確保が必要であるため、26年度の残りの研究費を27年度の人件費に回すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度の残りの研究費は27年度の人件費として使用する予定である。
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