研究課題/領域番号 |
26670415
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
各務 博 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30418686)
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研究分担者 |
梅津 哉 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (50251799)
土田 正則 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60293221)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小細胞肺癌 / 循環腫瘍細胞 / 抗腫瘍免疫 / DDX3X |
研究実績の概要 |
小細胞肺癌の循環腫瘍細胞を駆逐する癌幹細胞(CSC)特異的抗腫瘍免疫療法の開発を目的とする、ことを目的として平成26年度より本研究を行った。 1.オンコリスバイオファーマとの共同研究として行った末梢血循環腫瘍細胞の検討では、進展型小細胞肺癌患者より得られた5検体中全てでテロメラーゼ活性を有する循環腫瘍細胞が検出された。また、この循環腫瘍細胞の染色により、4検体でDDX3Xの発現を認めた。一方、限局型小細胞肺癌患者から得られた7検体中3検体でテロメラーゼ陽性の循環腫瘍細胞を検出したが、DDX3Xの発現をもつものは一つも認められなかった。 2.末梢血中CD4+ T細胞がDDX3Xに反応してIFNγを産生するか検討したところ、限局型小細胞肺癌患者12症例中5例で反応を認めたが、進展型小細胞肺癌患者7症例、健康ボランティア6例では全く反応を認めなかった。 以上より、進展型小細胞肺癌患者は末梢血を循環する腫瘍細胞が存在すること、その細胞は癌幹細胞化、EMTを進めると考えられるDDX3Xを発現しているが、これに対するT細胞免疫反応を欠如していることが明らかとなった。限局型小細胞肺癌では逆にDDX3Xに対するT細胞免疫応答が認められ、末梢血を循環する腫瘍細胞はDDX3Xを発現していないことから、DDX3Xに対するT細胞免疫が末梢血における血行性転移の障壁として働いている可能性が示唆された。 これらの結果は、論文投稿の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、小細胞肺癌患者の1. 手術検体、2. 生検検体、3. 末梢血循環腫瘍細胞、4. 末梢血T細胞、についてDDX3Xの発現、stemness marker、DDX3Xに対するサイトカイン産生能などを解析するものである。 平成26年度において、#3の末梢血循環腫瘍細胞におけるDDX3X発現解析をすでに10症例で終了した。#4の末梢血T細胞DDX3X反応性の解析も26症例について終了しており、有望な結果を得ている。この結果は論文投稿の準備中である。#2の気管支鏡生検検体の解析は、通常生検検体では難しいことが判明しEBUS-TBNA検体を用いることに変更して進めている。 以上より、研究目的については概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
1.小細胞肺癌臨床検体を用いた循環腫瘍細胞、生検腫瘍組織からのDDX3X発現を、更に症例数を増やして検討を進める。さらに、循環腫瘍細胞におけるPD-L1発現の検討を追加する。 2.小細胞肺癌患者末梢血より分離したCD4 T細胞、CD8 T細胞のCD62L, CD44, CD25といったnaïve, effector memory, central memory, regulatory T cellの分画を明らかにする解析を更に続けるが、これに追加してT細胞上のPD-1, LAG-3, TIM-3などimmune checkpoint分子の発現解析を行う。 3.小細胞肺癌患者末梢血より分離したCD4 T細胞、CD8 T細胞のDDX3X反応性検討を継続して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
小細胞肺癌の末梢血循環腫瘍細胞、末梢血Tリンパ球の解析は当初の予定通り進んでいるが、気管支鏡生検検体については通常生検では組織の挫滅が強く十分な検査結果が得られないことが判明した。現在、EBUS-TBNA生検検体を用いて解析を進めているが、症例数が当初予定よりも少なかったため、抗体購入費として残余が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度残余の55,387円については、今年度抗体購入費として使用することを予定している。
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