1.本研究は「EGFR 遺伝子変異肺癌は、接着分子発現による上皮性性質保持によってクラスター形成し、アノイキスを回避して転移する」という仮説の検証を目的とする。EGFR 遺伝子変異肺癌はイレッサ等の分子標的治療によく反応するが、遠隔転移により死亡する症例が多い。研究代表者は、EGFR 変異肺癌が臨床的には高頻度に全身性の多発転移を発症するにもかかわらず、実験系では転移能の生物学的指標である軟寒天中での増殖(アノイキス(アポトーシス)抵抗性)を示さないことに着目し前述の仮説を着想した。 2.2014年度は、接着分子として最もよく知られ、研究代表者の過去の報告においてもEGFR遺伝子変異肺癌において発現量が多いE-cadherinのRNA干渉によるノックダウンを行った。しかし、明らかなアポトーシス誘導を認めなかった。 3.2015年度はクラスター形成(spheroid)に寄与する遺伝子同定のための網羅的解析を行った。プールshRNAライブラリーを不死化気管支上皮細胞(HBEC)に導入した。導入後、細胞を二次元(フラスコの接着培養)培養(コントロール)または、三次元培養(超非接着培養フラスコ)し、これらの2つの条件間での、個々の遺伝子に対するshRNA数を次世代シークエンサーにて定量した。この結果、クラスター形成(spheroid)に寄与する複数の遺伝子候補を特定した。次に、これらの遺伝子のクラスター形成(spheroid)への関与を確認するために、合成オリゴによる個別ノックダウン実験を行い、クラスター形成(spheroid)に関与する数個の遺伝子を特定した。
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