研究課題
急性呼吸促迫症候群(ARDS)は敗血症など種々の病態を誘因として発症し、急速に重篤な呼吸不全に陥る疾患である。既存の薬物療法に有効性はなく、死亡率40%以上と高い致死率を呈する。本研究では、肺上皮細胞特異的Pten欠損マウス(Pten-KO)を用い上皮統合性制御とARDSの発症と進展の関連を検証した。免疫組織化学染色とwestern blotting法による解析の結果、Pten-KOでは野生型マウス(Pten-WT)と比較し、ブレオマイシン(BLM)気管内投与7日後の肺組織においてタイトジャンクション(TJ)構成分子(claudin-4とE-cadherin)および基底膜構成分子(lamininβ-1)の発現低下、上皮統合性破綻関連分子群(pAkt, pSmad2、pErk、pS6K、Snail)の発現亢進を認めた。Sircol Soluble Collagen Assay法による解析では、BLM気管内投与7日後と14日後においてPten-KOでは肺組織中コラーゲン沈着が亢進していた。CD31-/CD45-細胞のソーティング解析により、Pten-KOではAECにおける上皮統合性破綻関連分子の発現が亢進していた。以上から、上皮Ptenの欠損はTJ破綻と基底膜破綻からなる上皮統合性の破綻、肺損傷後細胞外マトリックスリモデリング亢進を引き起こすことが示された。細胞外マトリックスリモデリングはH1α-regulated lysyl oxidase (LOX)を介したさらなる上皮統合性破綻を引き起こすことから、ARDS症例(n = 31)を対象に気管支肺胞洗浄液(BALF)中のLOX濃度と予後の関連を検証した。生存群と比較して死亡群ではBALF中のLOX値が高かった。以上の結果からAECのPtenが上皮統合性を保持し、ARDSの発症および進展を抑制していることが示唆された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 1件)
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