研究実績の概要 |
臨床において喘息患者におけるオメガ3脂肪酸摂取の有効性を示した報告は散見されるが未だ詳細な機序については明らかではない。我々は卵白アルブミン(OVA)曝露感作およびダニ誘発性喘息マウスモデルにおいてオメガ3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)を投与しその有効性を検討したところ、両マウスモデルにおいて好酸球性気道炎症ならびに肺内における炎症性サイトカインの発現抑制を認めた。そこで我々はこれらのモデルにEPAを投与して、肺内におけるEPA由来代謝産物を始めとした脂質メディエーターのprofileを検討し、抗炎症作用に関与する脂質の探索・同定をおこなった。この検討には連携研究者有田誠先生らの協力のもと脂肪酸代謝産物を高感度に検出することができるLC-MS/MSを用いて包括的メタボローム解析を行った。その結果、抗炎症作用に関わる可能性があるEPA代謝産物がいくつか候補として挙げられ、これらの化合物を同モデルに投与してその効果を評価した。ダニ誘発マウスモデルに対してこれらの候補化合物の有効性は認められなかった。一方OVA曝露感作喘息マウスモデルに対して候補化合物を投与したところ、その一つである12OH-17,18-EpETEが好酸球気道炎症を抑制した。さらに投与後の肺におけるeotaxin-1のmRNAの発現が抑制されていることを確認した。さらにヒト気道上皮細胞株をIL-4, IL-13用いて刺激したところ12OH-17,18-EpETE 存在下ではeotaxin-1の産生が抑制されることを明らかにした。以上のことからOVA曝露感作喘息マウスモデルにおいてEPA代謝産物12OH-17,18-EpETEはEotaxin-1抑制を介して好酸球性気道炎症を抑制する可能性が考えられた。
|