研究課題
わが国の高血圧患者数は約4000万人にのぼるが、その大部分を占める本態性高血圧の病因は未だ明らかになっていない。全ゲノム関連解析や候補遺伝子解析によって解明された個人間のDNA塩基配列の違いは、高血圧発症のごくわずかしか説明できないため、発症には環境因子が大きく関与していると考えられている。高血圧を生じさせる環境因子には、交感神経活性化のほかに、食塩負荷、肥満・糖尿病、レニンアンジオテンシン系活性化などがあるが、エピゲノム異常との関連は不明確である。本研究により組織特異的かつ網羅的な解析によりまず近位尿細管特異的なDNAメチル化パターンを解明した。食塩感受性高血圧を呈する1例として糖尿病マウスを用いて解析したところ、アンジオテンシノーゲン遺伝子に異常メチル化を伴い発現が亢進していることがわかった(J Am Soc Nephrol 2015)。腎臓内でのアンジオテンシン系の活性化が高血圧発症に関わることが知られており、異常メチル化によって発現が増加したアンジオテンシノーゲンの血圧上昇における意義について解析を進めている。一方、遠位尿細管のエピゲノム情報獲得のため間在細胞特異的にEGFPを発現するマウスを作出し、ソーティングで間在細胞を分取することに成功した。近位尿細管の解析同様、特異的なエピゲノムパターンの解明を進めている。また、高血圧モデルでの間在細胞のポピュレーション変化とエピゲノム変化の関連についても成果が得られてきている。高血圧発症との因果関係についてとくに食塩輸送に関わる遺伝子の変化について解析を進める予定である。
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Hypertension
巻: 67 ページ: 99-106
10.1161/HYPERTENSIONAHA.115.06054
J Am Soc Nephrol
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