研究課題
本研究は、腎臓病患者由来の末梢血T細胞に、初期化遺伝子を導入してiPS細胞を樹立し、さらに腎糸球体上皮細胞へと分化させ、これを利用してin vitroで腎糸球体上皮細胞の機能解析を行うことを目的として開始した。特発性ネフローゼ症候群の原因となる糸球体疾患の多くは、腎糸球体上皮細胞の一次的な異常により発症するが、疾患別、症例別の糸球体上皮細胞の機能異常の詳細は、その採取と直接の観察が不可能で、不明な点が多い。そこで本研究は液性因子(サイトカイン、増殖因子、内因性ホルモン等)、や患者血漿成分に対する反応性を比較するなど、糸球体上皮細胞の異常を詳細に解析する方法を確立する。腎臓病を引き起こす上皮細胞の機能評価および治療手段を創成するための新たな手段に繋がると考えた。健常人および特発性ネフローゼ症候群を呈するMCNSやFSGS症例から末梢血Tリンパ球を採取し、初期化遺伝子を導入してiPS細胞を誘導し、腎糸球体上皮細胞へと分化させ、これを用いたin vitroでの糸球体上皮細胞の機能解析を行った。またサイトカイン、増殖因子、内因性ホルモン等に対する反応性、患者血漿成分に対する反応性を比較した。PAX2遺伝子異常による腎コロボーマ症候群患者の末梢血リンパ球より、iPS細胞を樹立し、糸球体上皮細胞へと分化させることに成功した。それらの細胞における糸球体上皮細胞特異マーカーの発現を確認した。これらの細胞を用いて種々の遺伝子発現を解析している。しかし現在のところ、患者および健常者由来の糸球体上皮細胞に明らかな遺伝子発現レベルの相異は同定されていない。一方、これらの細胞にはプロラクチン受容体が発現しており、以前から申請者らが心不全モデルラット腎にプロラクチンが高発現することから、興味深い所見である。併行して、この生理学的な意義を検討した。
2: おおむね順調に進展している
健常人および特発性ネフローゼ症候群を呈するMCNSやFSGS症例から末梢血Tリンパ球を採取し、初期化遺伝子を導入してiPS細胞を誘導し、腎糸球体上皮細胞へと分化させ、これを用いたin vitroでの糸球体上皮細胞の機能解析を行った。またサイトカイン、増殖因子、内因性ホルモン等に対する反応性、患者血漿成分に対する反応性を比較した。PAX2遺伝子異常による腎コロボーマ症候群患者の末梢血リンパ球より、iPS細胞を樹立し、糸球体上皮細胞へと分化させることに成功した。それらの細胞における糸球体上皮細胞特異マーカーの発現を確認した。これらの細胞を用いて種々の遺伝子発現を解析する系を確立することができた。
上記の実験系を用いて、ネフローゼ症候群と健常者末梢血由来iPS細胞において、現在のところ明確な遺伝子発現や蛋白レベルの差違は同定できていないが、解析する実験系としては確立できており、今後さらにメタボローム解析などを進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (4件)
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