研究課題
TF-inducible ES細胞データのin silicoスクリーニングによる尿細管細胞分化マスター制御因子の同定連携研究者の洪教授らにより転写因子を自在に誘導できるヒトES細胞バンクの充実が図られたため、昨年度よりヒトES細胞バンクを用いてin silico解析を行なってきた。現在、ヒトES細胞株、400種類以上の樹立が完了しており、次世代シークエンサーを用いたRNAシークエンス法による遺伝子発現誘導48時間後の転写産物測定も、目標の500転写因子分全てのトランスクリプトーム解析が終了した。このデータベースを元に明らかになった約30の転写因子のうち、ヒト尿細管細胞への分化誘導に関わる5つのマスター制御因子を同定した。修飾合成mRNA添加によるヒトES細胞由来尿細管様細胞の樹立技術開発TF-inducible ヒトES細胞株の遺伝子発現データを用いた情報解析により明らかとなった5つのマスター制御因子のうち、2つのTFでは、修飾合成mRNAとしてヒトES細胞に導入することで上皮細胞様の形態変化に加え、ヒト成熟腎尿細管細胞全般に発現しているKidney specific protein(KSP)の発現のみならずITGA8, AQP1, MEGALINなどの尿細管マーカーの発現増加を導入後わずか5日で転写産物量、蛋白発現量で確認することができた。これらは、ヒト多能性幹細胞から腎近位尿細管細胞への細胞分化に関わる可能性の高いマスター制御因子と考えられた。さらに、このうち3因子を組み合わせて添加することによりPAX2やLHX1といった中胚葉マーカー陽性の細胞群を経由してより成熟した尿細管様細胞を誘導できる可能性を見出した。今後、ヒト多能性幹細胞から尿細管細胞作成の新規方法として確固たる地位を築くことが期待される。
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